10分で分かるアフリカの鉄道あれこれ

katamachi2007-10-25

 ここ3年ほど毎年、アフリカに渡航していました。訪問したのは11ヶ国。このうち、鉄道がないルワンダブルンジ、貨物しか運航していないウガンダをのぞく8ヶ国で鉄道に乗ってきました。乗車距離はあわせて9000km近くとなります(ちなみに、これで日本を含む世界の鉄道踏破距離は10万kmを突破)。

 やはり他の途上国などと同様、アフリカ各国でも旅客輸送の主役は鉄道から自動車交通に移っていました。道路事情の悪いタンザニアヨーロッパ大陸に近く都市化しているモロッコを除けば、鉄道で移動しようと言う人はかなり希であり、各国とも主要幹線でも1日1往復の運転すら確保できていない。貨物輸送も同様で、あの南アフリカですらも幹線上ではあまり貨物列車を見かけませんでした。鉱山のある貨物専用線などをのぞけばかなりウェートが落ちているようです。
 その理由は、アフリカ各国が独立した後、きちんと鉄道施設や車両の整備がなされていないからです。植民地時代は旧宗主国であるイギリスやフランスがそこらの施設に資金を投じて維持してくれていたし、独立前後の60年代には新型のDLも導入していた。ところが、それから30年、40年が経過したけど、新たに新車を入れるカネがなくなった。部品もないし、整備もしないし、だから、稼働できる機関車は、書類上の在籍車両数と比べてかなり少なくなっています。施設を改良することもなくレールはボロボロ。職員の意識が低いのか定時運行もままならず、旅客も貨物もトラックや乗り合いバスに奪われてしまう。赤字は止まらず、減便、投資抑制を続けることでさらに利用者は逃げていく。
 そんなこともあって、ザンビア国鉄線でまともに動くDLは10両あるかないかとのことで、週に3本の旅客列車ですら運転が難しい。私が首都であるルサカ駅に行った時も「状態の良い数少ない機関車が故障したので、今日の運転は中止」とのことでした。ジンバブエもそこらは同様で、休止していた蒸気機関車を2006年から復活させてDLの穴埋めに使っていた。タンザニア国鉄は、最重要幹線のうち、最大の都市ダルエスサラーム〜首都ドドマ間を2006年から全線休止してしまい、今では東部のローカル区間で細々と稼働させているだけ。ウガンダに至っては2000年から旅客輸送を全廃させてしまっています。
 さて、以降は、アフリカで乗った鉄道についての報告です。

  • 【アフリカの鉄道について書いた過去の日記】

アフリカ縦断の旅(その2 ブルンジ・タンザニア編)
マダガスカルを走るフランス・ミシュラン製の"ネコバス型"レールバス
13泊14日間7189km、片道110万円の豪華列車の旅
モロッコの二階建て電車を撮っていて警備員に捕まった話。
アフリカ東部と南部を今でも走る蒸気機関車

ケニア

▽モンバサ→ナイロビ 530km(2等寝台)
 ※"Jambo Kenya Deluxe"(モンバサ・エクスプレス)で週に4本運転。外国人団体客の利用も多く、寝台車・食堂車ともそれなりにしっかりとした造りの客車であった。この区間の途中には、あの悪名高き"人食いライオン"が行き交っていた場所がある。イギリスによって鉄道建設がなされた100年前、その建設現場に人喰いライオンが出現し、何十人ものの労働者が喰い殺されてしまった……なんて逸話を聞いた方も多いと思う。現在、動物保護区となってサファリー観光客が行き交うツァボ国立公園の付近である。

▽ナイロビ→キスム 398km(2等寝台)
 ※ケニア第五の都市と結ぶ列車"Port Florence Express"で、モンバサ線に次ぐランクの列車なのだけど、こちらの利用は現地人ばかり。列車はボロボロで車内の電気が点かず、陽が落ちると真っ暗になって怖かった……
▽キスム→Mihoroni 50km(SL牽引チャーター列車便乗)
 ※上記列車でキスム駅に着いたら、ちょうど3020号というSLがホームで煙を上げていた。イギリスの鉄道マニアグループがチャーターした列車で、フォトラン用にキスムから3日ほどかけてナイロビまで走らせるということだった。こういうSL牽引列車は年に2〜3回運転されているとのこと。旅行会社や鉄道のスタッフに誘われて、近くの都市まで便乗させてもらった。肝心のマニアさんたちはクルマで移動しているんで、乗客は僕と現地旅行会社のスタッフ3名のみ。紅茶をごちそうになりながら鉄道趣味談義に花を咲かすことができた。Mihoroniという駅まで連れて行ってもらって、あとは僕もタクシー借りて何カ所かで撮影した……のだけど、その画像は一枚も手元に残っていません(T_T) →後述

ウガンダ

 2000年より旅客列車の運行は停止中。貨物列車は首都カンパラを拠点として一部で動いている。 

タンザニア

Tanzania Railways  http://www.trctz.com/default.htm
Tanzania Zambia Railways(TAZARA鉄道)  http://www.tazara.co.tz/
▽キゴマ→ダルエスサラーム 1256km(1等寝台→2等寝台)
 ※当時はダルエスサラーム〜キゴマ・ムワンザ間で週に3本運転されていた。ブルンジ国境に近いキゴマから乗ろうとしたが、指定席が2週間先まで取れないという超満席状態。駅長さんに頼み込んだけど裏ルート用の予備席もないらしい。そこで途中のタボラ駅まで飛び込み乗車。ここで併結されるムワンザからやってくる編成の空きベッドを車掌に売ってもらって事なきを得た。線路も車両もかなり傷んでいてダイヤは混乱していて、列車は14時間遅れでダルエスサラームに到着。これは常態化していた。そんなこともあって2006年からダルエスサラームドドマ間という最重要区間で運休している。線路の整備をしているという話だっけど……??
ザンジバル島内にある廃線跡巡り
 ※60年代にわずか1週間だけ国連に加盟していた独立国、ザンジバルの島に鉄道の廃線跡がある。第2次世界大戦のころまで運転していたらしい。橋とか路盤がまだ残っていました。
ダルエスサラーム→ナコンデ969km(1等寝台)
 ※中国支援で建設された鉄道で、タンザニアザンビア共同出資の会社が運営。通称「タザラ鉄道」。中国の鉄道っぽい雰囲気が漂う(毛沢東の肖像もある......)ダルエスサラームの拠点である"タザラ駅"はタンザニア国鉄駅とは別の場所にあります。こちらの整備状態はかなり良好でダイヤ通りに運転していました。乗車率はほぼ100%だし、食堂車のサービスなんかも良かった。ただ、北朝鮮製の毛布にダニがいたようで、翌朝、体のあちこちが噛まれていました(^^;)
アフリカ縦断の旅(その2 ブルンジ・タンザニア編)

ザンビア

▽ナコンデ→カプリ・モプシ 888km(1等寝台)
 ※タザラ鉄道のザンビア側。Newカプリ・ムポシ駅と首都ルサカの間は連絡バスが頻発運転。ルサカ駅の近くにタザラ鉄道の事務所があって予約もできます。
ルサカ→リビングストーン
 ※週に3回運転と言うことですが、当日の突然の運休により未乗車。かなり整備状態が悪いようですが、旅客列車はたまに動いているそうです。代わりに乗ったバスの車内でデジカメを盗られた……ゆえにケニアのナイロビ以降、タンザニアウガンダ、タザラ鉄道の画像が一枚もないんです(>_<)

ジンバブエ

▽ビクトリアフォールズ→ブラワヨ 472km(1等寝台)
 ※戦前製の木造寝台客車。あまりにもレトロすぎて感激しました。ブラワヨ駅の裏手の機関庫側に鉄道博物館があって十数台のロコが保存中。その一部が入替蒸気として復活しています。ちなみに、500km近くの距離があるにもかかわせず、寝台夜行1等車の運賃はわずか5ドル(600円)。インフレ&闇レートの関係でこんなに安くなっていたのですが、あまりにも異常に安い値段です。乗車前月に運賃が5倍にアップしたからこの値段なったわけで、それまではわずか1ドル(120円)で乗車できたとのこと。スゲー
 現在、国内第2の都市ブラワヨを拠点に、首都ハラレ、ビクトリアフォールズへ夜行列車が毎日運転……という触れ込みですが、僕が行ったときは週に1〜2本は運休しているという話でした。

ボツワナ

▽フランシスタウン→ハボロネ 436km(1等寝台)
 ※一時期、日本より国債の評価が高いというので有名になった国。冷房付き寝台はかなり立派でした。この区間に昼行の3等列車が1往復、夜行の1・2等が1往復。僕は夜行の方に乗ってみましたが意外に利用者は多かったです。

南アフリカ

南アフリカの鉄道運営会社Spoornet http://www.spoornet.co.za/SpoornetWebContentSAP/html/index.htm
ヨハネスブルクイーストロンドン 1100km(1等寝台)
 ※中国製の新型寝台客車が投入されていたけどガラガラ。もう南アフリカの長距離旅客輸送はダメダメですね。高速バスもさほど本数がなさそうですし、中長距離移動はマイカーor飛行機利用にシフトしてしまった。イーストロンドンではメトロにも乗ってみましたが、区間&降りた駅名が分かりません。
▽ナイズナー→wildness 53km(Cho-tjoe train DL牽引)
 ※2日前のブログで書いたように2005年の災害で不通になっていて、SL牽引ではなくDL牽引になっていました。現地の駅に行ったとき初めてそのことを知り、今回の旅の最大の楽しみにしていたこともあって、かなりガッカリさせられました。だってそのためにわざわざナイロビから鉄道を使って南下してきたのに……。それでも観光客はたくさん乗っていてなかなか楽しい旅でした。現在のCho-tjoe train(ちゅーちゅーとれいん)についてはhttp://www.onlinesources.co.za/chootjoe/history.htmのHPを参照。ジョージで週に3回、SL運転を始めたようです。
ケープタウンヨハネスブルク 1530km(1等寝台)
 ※南アフリカ最大の幹線でしたが、この区間イーストロンドン行き以上にガラガラ。僕の乗車する2日前(2005.10.26)に、あの「ブルートレイン」がディールフォンテーン駅(南ア中央部)で衝突事故を起こして運転助士が死亡。ツアーで参加していた日本人の男女2人を含む256人が重軽傷を負い、客車もかなり潰れてしまった。現地の新聞、そして当日の乗客の間ではかなり話題になっていました。
ヨハネスブルク→Isanda(空港の最寄り駅) 約20km
 ※いわゆるメトロ。ヨハネスの治安の悪さを象徴する、かなりデンジャランスな列車ということでしたが、意外に安全でした。ロングシート4扉の各車にライフルを持った警備員が4〜5人乗っていたからなんですが……。でもヨハネスの中央駅付近はかなり怖ろしかったですよ。そもそもアフリカ最大の都市なのに道路を歩く人がほとんどいない。「リアル北斗の拳」、「世界三狂危険都市」と呼ばれるだけある。
 現地の新聞を見ると、2010年のサッカーワールドカップ南アフリカ大会にあわせて中国製の新型電車を入れるとか言う話になっていました。

マダガスカル

http://www.fce-madagascar.com/index_eng.htm
▽フィアナランツィア〜マナカラ 163km(1等)
 ※これを乗ったのは2006年秋。マダガスカルでも首都近くでは旅客扱いが停止されており、営業している区間はここだけだった。かなり景色もいいんでオススメ。バナナを満載した貨客混合列車で、道中でザリガニを喰ったり愉快な体験をたくさんしました。1等が2両編成になっていてこれは事実上外国人観光客専用列車となっていました。
マダガスカルを走るフランス・ミシュラン製の"ネコバス型"レールバス


<モロッコ

カサブランカ空港〜カサブランカ・ボヤージ(Voyagerous) 約30km(1等)
 ※空港とカサブランカ市街地を結ぶ急行電車で行きも帰りも乗車。1時間ヘッドで運転され、部分的に120km/hぐらいで走っていてかなり早い。1等だとシートも柔らかだし、もちろん冷房付き。ここまで挙げた他のアフリカの鉄道とは雲泥の差がある。

カサブランカマラケシュ 257km(1等)
マラケシュカサブランカ 257km(2等)
 ※日本の日立製の電気機関車が牽引。砂漠の中を最高120km/hで力走し、途中のオアシス上の都市を結びながら、世界遺産の都市へと連絡。ほぼ満席状態で、1等(6人コンパートメント)だとヨーロッパ系観光客がと地元客が半々ぐらい。2等(8人コンパートメント)もほぼ満員。ちなみに1等料金は2等の5割増。

カサブランカ〜ウジダOujda 579km(1等寝台)
 ※夜行列車に乗りたかったので、特に用もないけどアルジェリア国境に近いウジダまで行ってみました。この都市は特に見るべきものはないらしいので、このモロッコ最東端の終点駅にいたのは15分のみでした。列車が21:30に発車するとすぐに減光してしまい夜景が楽しめなかったのが残念。ちなみに4人のコンパートメントの中に、20代ぐらいの女性が一人いました。イスラムにしては珍しい。しかも異教徒である僕の目の前でいきなり....(以下略)
 
▽ウジダ〜フェス 354km(1等)
▽フェス〜メクネス 56km(2等)
 ※ほとんど砂漠のど真ん中を走るだけでしたが意外に景色は変化に富んでいて楽しめた。フェズ駅で鉄道車両を撮っていたら警備員に捕まってカメラを取り上げられそうになったけど、駅長さんの配慮で解放された。
モロッコの二階建て電車を撮っていて警備員に捕まった話。

▽タンジェ〜メクネス 261km(2等)
▽メクネス〜カサブランカ 269km(1等)
 ※スペインとジブラルタル海峡を挟んで近接しているタンジェからメクネスに戻り、このメクネスからモロッコ国鉄の誇る最新鋭2階建て特急電車に乗車する。一部の区間では160km/hで走っているのだが、かなり揺れは激しかった。1等に乗ったのにリクライニングも回転もせずに座り心地が良くないというのが残念。


追記

 なんで昔、自身の備忘録としてまとめた文章をアップしたのかというと、アフリカの鉄道に関する日本語情報がネットでも書籍でもあまり見かけないからです。まあ、このブログを見る人の98%の方にはどーでもいいことなんでしょうが、現地情報を求めている方も日本国内に100人ぐらいはいるんじゃないでしょうか(過去にいくつかアップした日記も、検索エンジンでアクセスしてくる方が意外に多い)。ここ4日ほどで情報を整理しているうち、来年はダカール(セネガル)とバマコ(マリ)を結ぶ週一回の国際列車に乗ってみたいなあ……と思い始めたのだけど、それはまた別の話。