「なは」ヘッドマーク盗難のナゾ。

 京都―熊本間を走るJR寝台特急「なは」と京都―長崎間を走る「あかつき」が連結して走る際の「なは あかつき」と記された列車のヘッドマークが盗まれたことが11日わかった。「なは」と「あかつき」はそれぞれ、今月14日で運行廃止の予定。JR九州は福岡県警門司署に盗難届を出した。
 同社によると、ヘッドマークは鉄製で直径66センチの丸形。8日午前8時ごろ、門司駅北九州市)から熊本駅熊本市)に到着した寝台特急車両基地に移動させたところ、整備会社の作業員が車両のヘッドマークがなくなっているのを発見し、同社に連絡した。
特急「なは あかつき」のヘッドマーク盗まれる朝日新聞2008年03月11日

 う〜ん、また現れたか。
 先日、「銀河」に乗ったときも、「あかつき」の時も、車内の扉部にある「●号車 寝台車 禁煙席」と書かれた紙がガムテープで固定されていた。手癖の悪い人の被害を避けるための処置なんだろう。なにかが消えると報道されると、ヘッドマークやサボ、備品、駅名標などが大量に盗まれていく。明らかな盗品はなかなか流通できないから、コレクター&通りすがりの鉄道好きが個人所有を目的として持っていくのだろう。

 過去にこの日記でも何度か書いたと思うが、なにかが手に入れられない(=消えてしまう)となると、人は、その喪失が惜しくなって自分で独占しようとする(「廃止」と聞くと血が騒ぐ鉄道マニアの気持ちを考える - とれいん工房の汽車旅12ヵ月)。限定モノに群がる心理、あるいは女性や友人に対する感情なんかも同一のものなんだろうか。あまりにも露骨に欲望を出してしまうと、他人に迷惑をかけてしまう。だから、鉄道マニアだと、走行シーンを写真で収めたり、指定券を取って乗りに行ったり……と別な行為で代償することで、その気持ちを昇華させていく。
 他人(=JR)のモノ(=ヘッドマーク)を盗んでいく……という行為に出たのは、そうした独占欲が歪んだ形で(ある意味ではストレートに)現れてしまったのだろう。持っていったヤツは「これで『なは』はオレのモノ」と喜んでいるのだろう。あれを欲しがるマニアは何万人もいるが、個人所有できるのは自分ただ1人。誰も追随できない。なにかを独占したいという欲望を他の代償行為で補うことができない気の毒な人なんだろうと思う。
 もちろん、それってただの犯罪なのだけどね。とりあえず誰か知らないけど、返せよ。たとえ廃止で不要になるとは言っても、あれはみんなの共有物だよ。
 で、僕が不思議なのは、どのタイミングで泥棒したのだろうか……という点。西日本新聞の「なは・あかつき ヘッドマーク盗 JR九州が被害届」という記事もあわせて見てみると、

  • 3月7日23時頃 門司機関区でヘッドマークを装着
  • 3月8日 門司駅4:42発
  • 熊本駅7:36着
  • たぶん3、4分で熊本車両センターへ回送
  • 7:50頃 JRの関連会社員が盗難を発見

ということらしい。
 たぶん熊本駅では何人かマニアが撮影していたんだろうし、そこで持っていくのは難しい。となると、「なは」の回送編成を熊本車両センター(旧熊本客車区)へ持って行ってからのわずか10分前後での犯行か。でも、ブルトレヘッドマークって意外に重いし、そんなに簡単に外へ運べないはず。ナゾは深まるばかりなのだけど、それはまた別の話。

追記

 「なは・あかつき」は14日に発車する列車を最後に廃止となる予定。盗難届を受けた福岡県警門司署は、マニアが盗んだ可能性もあるとみて捜査している。(中略)8日午前4時半過ぎに門司駅を出発していた。JR九州は、門司機関区周辺で盗まれたと見ている。
 廃止が近い列車では備品が盗まれるケースが多く、2005年に廃止された長崎―東京間の寝台特急「さくら」も、廃止発表後、ヘッドマークなどが盗まれた。
廃止予定の寝台特急「なは・あかつき」ヘッドマーク盗難読売新聞2008年3月11日

 西日本新聞は「熊本の車両センターに入っていた。同センターで盗まれたとみている」としているが、読売は「門司機関区周辺で盗まれた」としている。門司機関区の辺りって容易に近づくことはできなさそうだけど、知る人ぞ知る抜け道なんて言うのがあるのだろうか。
 僕が右上で貼った画像のように、門司駅で機関車の付け替えの際、あるいは「なは」の客車の中から、後部のヘッドマークを撮ることはできる。門司、小倉、博多、鳥栖あたりでマニアが撮った写真なんかも重要な証拠物になるのかも。