『エスパー魔美』のイベントか……

 さっきまで「クレヨンしんちゃん」の「オトナ帝国」をやっていたんですね。アニメ番組の視聴率の低下が深刻になっており「クレしん」もまたその数字を落としている昨今、土曜日のゴールデンタイムに、しかも番組改編期にアニメ映画をやるとは…… なかなかテレビ朝日、冒険的ですね。シリーズ最高傑作との誉れも高い作品ですが、どれぐらい数字を取るのか。ちょいと気になります。新聞のテレビ欄では、「▽笑!泣!感動!一度は見ておきたい映画!」とありますが、それだけではなかなか一般視聴者は分かってもらえないような。
 でも、監督を務めた原恵一って、いつしか知名度が上がってきましたね。東大のセンセーによるインタビュー本まで作られるようになるとは。ほんの十年ほど前までは原や「クレしん」を語るオタク業界人って眠田直ぐらいだったわけでして、隔世の感があります。

アニメーション監督 原恵一

アニメーション監督 原恵一

 そんな原の原点となったのが、藤子不二雄原作の「エスパー魔美」だったわけです。


 当時、シンエイ動画のアニメって、正直、ハズレの作品ばかりというイメージが僕にはありました。藤子のネームバリューにおんぶにだっこされているだけで質的にはあまり評価すべき所がない。作画はイマイチ、演出はステロタイプ。今からすると、そうしたオーソドックスな作り方もありなのかなという思いはありますが、若い頃って先鋭的なことをしている人たちに興味がいってしまいますからね。
 「魔美」放送が始まったのは1987年4月だったわけですが、第1話のOP前に15秒ぐらいのアバンタイトルがあったんです。魔美がチョークを持って黒板に自分の名前を書く……ただそれだけのシーンだったのですが、それを見た瞬間、何か惹きつけられるモノがありました。「ああ、これがどんなに駄作だったとしても、オレはこの作品を嫌いにはなれないなあ」と。
 それからの2年半、119話は至福の時でした。毎週ビデオを撮り、スタッフや声優をメモして、簡単な評価を付ける。そうした作業を黙々と付けていました。下請けには亜細亜堂とかIGタツノコ(Production I.G)がローテーションで入っていました。IG作画で貞光演出の回はハズレとか、本郷は調子に波があるとか、エースが堤であるというのは否定しないが、オレは高倉作監の方が好きだとか。アニメ鑑賞という趣味を自分なりに確立できたのはこの作品のおかげでした。

エスパー魔美 DVD-BOX 下巻

エスパー魔美 DVD-BOX 下巻

 この夏に出たDVDを見直すと、ダメな回と当たりの回とが極端ですね。と言いつつも、やっぱチーフディレクター原恵一の回は魅力的です。正直、地味な素材だし、マニア的な人気は集まるはずもない。でも、演出も作画も不利な環境の中でベストを尽くそうとしていた。あまりにもストレートな表現は20年後の今からするとなかなか恥ずかしかったりするのですが、それもまたスタッフのマジメさの裏返しだったのでしょうね。

 さて、そんな原恵一を最初にフィーチャーしたのが徳間書店の「アニメージュ」だったわけです。確か1986年ぐらいに、当時、「ドラえもん」のローテーションに入っていた原を取り上げていた記憶があります。
 そして、「エスパー魔美」。他のアニメ誌が無視している中で、注目作品として取り上げ、原のインタビューもとっていました。毎年春に行われていた「アニメグランプリ」でもなかなか上位に食い込んでいました。原とその仲間たちを評価していた人間が自分以外にもいたことがなんとなく嬉しかった。

 その時の雑誌スタッフだったのがデータ原口や小黒祐一郎だったわけですね。なんと、来週末、原恵一を取り上げたイベントがある、と。

第31回アニメスタイルイベント 『エスパー魔美』特集(仮)
内容/トーク、アニメ『エスパー魔美』の傑作をビデオ上映
出演/原恵一小黒祐一郎(予定)
会場■LOFT/PLUS ONE
日時■2006年10月9日(祝)
※12時30分開場、13時開演、16時00分終演予定

第32回アニメスタイルイベント 「アニメ様」特集(仮)
内容/トーク(ビデオ等の上映はありません)
出演/小黒祐一郎細田守吉松孝博今石洋之(予定)

 業界的には細田守の方に注目が集まるのでしょうけど、私は絶対原恵一です。ただ、あまりトーク慣れしてなくて話は寒そうな......と勝手にイメージしているのですが(あくまでも私のイメージですよ)、はたしてどうなることやら。
 でもなあ、10月9日って、私、タイかラオスにいるんです*1。参加できません。もー少し早く発表していてくれればスケジュールをずらしたのに…… 残念。

*1:そういや、原って、「魔美」の最終回に続いて「チンプイ」のコンテを2本切った後、東南アジアに一年近く逃避行していたんですよね。そのまま帰ってこなくなるんじゃないかと人ごとながら心配していました。って、人のこと言えないのですが