北極星とガンダーラ仏像が空を飛ぶアヤしい宗教スポット能勢妙見山。

katamachi2007-04-21

 先週の金曜日(4月13日)は大阪府能勢町の妙見<みょうけん>山に行ってきました。
 「妙見さん」と言うと、古くから関西、いや西日本各地から信徒を集める日蓮宗の関西最大の霊場のことで、川西能勢口妙見口間を結ぶ能勢電も、そもそもはここへの参拝客輸送を目的の一つに掲げて敷設されたわけです。
 本来の目的は、能勢電妙見ケーブル線でした。能勢電の終点の妙見口駅から1.5kmほど離れたところにケーブルカーの乗り場(黒川駅)があり、ここから妙見山麓のケーブル山上駅まで0.6kmの線路が延びているのです。
 この路線は桜の名所としてもよく知られており、ちょうど桜が満開、あるいは散りかけというタイミングだったのでそれを狙って行ったわけです。低気圧が直撃していて強風が吹き荒れ、花吹雪が舞い散っていたのですが、それなりに面白い画が撮れたとは思います。
 あと、ケーブルの終点駅から5分ほど歩いたところに、やはり能勢電直営のリフト線もあります。妙見の水広場〜妙見山間0,6km。戦前はここにもケーブルカーを走らせていたのですが戦時中に鉄供出のため運休せざるを得なくなりました。その後、ケーブル線再開のため免許を持ち続けたのですが実現することかなわず、未成のまま免許を失効させ、代わりにリフト線を敷いた......という未成線廃線跡フリークにはたまらない歴史を持つスポットでもあるんです。

北極星信仰と密教道教陰陽道がごちゃ混ぜとなった怪しい妙見菩薩

 さて、この妙見山。鉄道趣味的要素以外にも楽しめる要素がもう一つあります。一応、ここは日蓮宗の由緒あるお寺ではあるんですが、密教とか山岳信仰とか怪しい宗教要素が満載なんです。浄土真宗禅宗のお寺を見慣れた目には、アヤしさ満点のスポットに見えてしまったわけです。

  • 正式には「無漏山眞如寺境外<けいがい>仏堂能勢妙見山」という豊能町の眞如寺という寺の飛び地的扱いになっている。でも、本院よりこっちの方がはるかに有名。
  • 妙見大菩薩は、北極星を真理の象徴とする北斗信仰が起源となっている。矢筈紋章という十字紋章が飾られている。中国の星宿思想とか北極星信仰、あるいは道教やら密教やら陰陽道やらの影響もあるらしい。
  • 古くからの妙見信仰、神仏習合の名残で「妙見宮」と呼ばれる。参道の入口に鳥居や狛犬がある。

 あまり細かく触れているとボロが出そうなのでこれぐらいにしておきますが、とにかく信徒以外には不思議な風習が境内に漂っています。
 その最大の違和感とも言える施設が、山道を登った見晴らしのいいところにある「星嶺」<せいれい>と呼ばれる信徒会館です(妙見山のHP参照)。

16本の御神木によって覆われたが総ガラス張りの建物......というところからいかにもポストモダン的なんですが、それが星の形をモデルにした不思議なデザインをしているんです。妙見大菩薩の降臨をイメージし、信仰のルーツである北極星をイメージしたらしい。遠くから見ると、建物と言うよりはモニュメントにしか見えないんですね。
 で、中をのぞき込むと、ガラス床の円形のフロアーは礼拝堂になっていて、空には十字の矢筈の紋章が浮かび、ガンダーラ仏像が4体、ピアノ線に釣られて宙を舞っている,,,,,,。えっ、ここって怪しい新興宗教の施設じゃなくて、ホントに由緒正しい仏教寺院なの?? 日蓮宗って、創●学会みたいなんじゃなかったの???
 ちなみに設計は建築家の高松伸(ああ、なるほど(^^))、完成は1998年4月。とにかく時代遅れでバブリーなポストモダン建築です。いろいろツッこみどころが多い建物なんですが、中は写真撮影厳禁というのが口惜しい。

お寺が受託している簡易郵便局は今年5月で閉鎖

 さて、ここのもう一つの謎となっているのが1階にある郵便局です。名前は妙見山簡易郵便局。ここは日本郵政公社の直営ではなく、眞如寺・能勢妙見山に業務委託された簡易郵便局なんです。宗教法人が運営している郵便局って全国でもここぐらいですよね。信徒や観光客がやってくるとはいえあまり郵便局の需要はなさそうなんですが、なんで運営を続けてきたんだろう。
 この郵便局が古い局舎でやっていた16年前に訪ねたことがあり、さらに、この4日前の4月9日にも知人とクルマで来訪していました。郵便局を巡る*1ドライブの過程で立ち寄ったのですが、その時、運悪く通帳を山門下の駐車場に止めたクルマの中に忘れて貯金できなかったんです。
 以前に貯金しているので諦めれば良かったのですが、例の郵政民営化の絡みで、近日、閉鎖される...と聞いたので、それまでにもう一回郵便貯金しておきたい......と、わずか4日後にわざわざ鉄道で妙見山までやってきたのです。
 妙見山簡易郵便局は、ガラス張りの「星嶺」の1階にあります。入口で靴を脱いでスリッパに履き替え、研修室の中に入ります。すぐ側では百人以上の信徒が集まるお祈りをされているのに、単なる郵便局マニアがお邪魔していいんだろうか.....とか思いつつ、フロアーの左手にある売店へ向かいます。妙見山グッズを売っているここの一角が郵便局のフロアーなんです。
 信徒さん兼局員さんに1000円を差し出して通帳に入れてもらいます。軽やかな手さばきで2分ほどで印字が済み、そして通帳の空欄に「妙見山簡易郵便局 標高660.1メートル」とある青いゴム印を押してもらいます。
 これで趣味活動が完了です*2。お土産に、この「星嶺」という建物を描いた絵はがきと星マークの妙見山ステッカーをもらいました。
 先日聞いたときはまだ確定していなかったようですが、この日は「平成十九年五月二日の営業をもちまして閉局致します。」というポスターが貼ってありました。お寺の意向もあって、1912年以来95年も続いた(簡易郵便局でこんなに古いのは極めて珍しい)郵便局の閉鎖が決まったようです。残念。

*1:郵便局の窓口で貯金をし、各局の名前の入ったゴム印を通帳に押してもらう......という極左活動をしている旅行派鉄道マニアのごく一部に大人気?の趣味。ご本尊は種村直樹

*2:「うん? 郵便局でスタンプを押してもらって何が楽しいの?」と本質的な疑問を投げかけられると困ります。その意義と目的をフツーの人に説明するのはかなり難しいのですが……まあ、お寺を廻って朱印帳をもらったり、子供たちが参加しているスタンプラリーとかと同種の遊びです。