JR参宮線なんて廃止して駐車場にしてしまえ by伊勢商工会議所会頭

katamachi2007-05-27

 知り合いが振っていたネタです。

 JR参宮線を廃止して1000台規模の駐車場を整備――。13年の伊勢神宮三重県伊勢市式年遷宮を前に、和菓子製造販売会社「赤福」会長の浜田益嗣(ますたね)・伊勢商工会議所会頭(70)が、予想される交通渋滞の緩和策として、こんな提案をしている。実現可能性は低いとみられるが、地元市議がJR東海松本正之社長に「存続」を訴えるなど波紋が広がっている。
(中略)
 浜田氏は森下隆生伊勢市長や地元選出国会議員らとの2月の会合、同商議所の常議員懇談会に提出した文書などで、参宮線多気―鳥羽、約29キロ)を廃止し、同線伊勢市駅で列車の検査や清掃などをしている車両施設の用地に1000台分の駐車場整備を提案。観光客受け入れには「参宮線が大きな阻害要因」と指摘している。
(中略)
浜田氏は朝日新聞の取材に「どんな提案にも異論はつきもの。選挙での集票に関係ない私だからこそ思い切ったことが言える」としている。
「『参宮線廃止、駐車場に』赤福会長、式年遷宮控え提案」、朝日新聞、2007年05月26日

 そーかー。参宮線はイラないか。
 国鉄末期は名古屋や京都と結ぶ直通急行が廃止されてもう悲惨な状況だったけど、それを引き継いだJR東海は、伊勢鉄道と提携しながら快速「みえ」号の増発に取り組んで、複線化や新車投入もやってきた。それらの施策はベストじゃなかったかもしれないけど、資源と資金が乏しい中でそれなりに頑張ってきて、利用者数の面でもそれなりの効果を挙げてきた(と考えています)。
 でもなあ、交通渋滞の緩和か......クルマのことを考えると駐車場は必要だなあ。

「鉄道復権」なんて世迷い言を言っているのが空しくなる

 伊勢市駅のJR線ホームと近鉄線ホームとの間には、確かに今ではなぜ必要なのか分からない留置線と引込線がたくさんある(ターンテーブルもまだあるのか?)。近鉄山田線鳥羽線があるから、たいていの伊勢市民には、参宮線なんてどーでもいい路線だ。どーせ客が乗らないなら参宮線全部廃止してしまえばいいし、さして困らないだろ。そんな発想なんですかね(で、多気町民や玉城町民はどうするの?)。伊勢タウンマネージメント運営協議会とか地元の商店主たちがいろいろ参宮線の活性化のためにイベントを開いたりするのに、"エライ人"はやっぱり発想が違う。ポピュリズムにとらわれがちな連中とは違い、大所高所の観点から発言をされている。
 正月や夏休みなんかに伊勢を訪れればよく分かるんだけど、伊勢市内って慢性的に渋滞しているんだよね。伊勢自動車道多気勢和インターチェンジあたりからずーっとクルマの列が続いているときもある。行き止まりに近い都市構造になっているから伊勢神宮と鳥羽の間で必要以上にクルマが滞留してしまうんですよ。そんなところでマイカー客中心の観光開発をやっていること自体がおかしい。本来なら、伊勢西インターチェンジか伊勢インターチェンジの近くに大規模な駐車場用地を確保して、内宮や外宮との間に連絡バスをピストン往復させたりするのも一つの手じゃないの。
 まあ、地元の経済人から「参宮線いらね」と言われてしまうと、ヨソ者の鉄道マニアには反論しにくいんだけど、なんだか寂しいなあ。「鉄道復権を目指そう」とか「公共交通中心のまちづくりを」とか「LRTで人に優しい交通機関を」とかそーしたことを言っているのは、「学者とか鉄道マニアとかごく一部の人間だけなんだ」ということを改めて思い知らされちゃいました。
 でも、そーしたことを言うのって、別に伊勢市だけじゃないんだよね。クルマの邪魔だから鉄道なんて廃止してしまえ......ってのは別に暴論じゃなくて、マイカーしか使わないようなフツーの人なら時には思うこと。50年代や60年代なんてそんな理由で全国の路面電車(時にはローカル私鉄も)が廃止されていきました。
 最近でも変わらないんですよね。20年ぐらい前に新聞報道であったので思い出すのは、

  • 名鉄岐阜市内線の長良線(1988年に"ぎふ中部未来博覧会"の邪魔になるという理由で廃止。2005年の600V区間全廃の予兆)
  • 阪堺電気軌道上町線(1988年頃、天王寺駅前駅〜阿倍野駅間を廃止してくれと地元商店街が要望していると報道された。荷捌きの邪魔だから、廃止すれば乗換客が商店街を歩いてくれるので助かる、というのがその理由。)
  • 福井鉄道福武線(福井駅前電停〜市役所前電停間。理由は阪堺とよく似た感じ)

という三件。赤字問題で廃止話が出てきたんじゃなくて、クルマの邪魔だからどいてくれって論理なんです。まあごく一部の商店主たちの声であり、地元の総意ではないと思いたいですけど。
 ただ、伊勢商工会議所の会頭は、テレビCMでも有名な「赤福」の会長さん。赤福って伊勢神宮界隈ではあまりにも存在感がありすぎるもんなあ…… 赤福餅は好きなんで年に1回ぐらい、大阪駅天王寺駅キヨスクで一箱買って自分で食べていましたが、もう今年から自粛することにします。これから鉄道マニアの皆様は、御福餅本家の「御福餅」をヨロシク!
 まあ、どーしても伊勢神宮式年遷宮のために駐車場が必要というのなら、いっそのこと内宮前で赤福がやっている「おかげ横丁」を更地にして全て駐車場にするというのも一つの考えじゃないのかな。あんな張りぼての建物なんか潰しても惜しくはないし、土地は2700坪もあるらしいし、二層構造にすればクルマも1000台ぐらいは停めれるでしょう。街やお伊勢さんのことを真剣に考えているなら、伊勢商工会議所会頭も自分の商売ぐらい犠牲にしなきゃ......なんてことも考えてみたのですが、それはまた別の話。

追記
 参宮線廃止で一席ぶった浜田益嗣伊勢商工会議所会頭。検索エンジンではその足跡であまり興味深い話は引っかからないなあ。毎日新聞中部本社の提灯記事ぐらいか。国土交通省の「観光カリスマ」に選ばれているらしい。気になったキーワードは、「昨年2月の前市長の死」、「前市長が地元財界を掌握し切れていなかった」、「地元出身の国会議員と市の商工会議所の幹部が組み、落選した対立候補を支持していた」、「選挙の争点となったのは伊勢市駅周辺の再開発問題」ってとこですか。読売新聞の「見えない7年後の伊勢プラン 駅前再開発も内容未定」ってのも参考。JR伊勢市駅なんかどーでもいいやって理由がなんとなく想像できます。