「冷房化率が大幅に上昇します。」という鉄系の定番記事を思い出す

katamachi2007-08-01

琴電100%冷房化 設備ない最後の車両引退
 高松琴平電気鉄道香川県高松市)が長尾線で運行していた冷房のない最後の車両3000形315号が31日、引退した。これで琴平、志度両線を含む全3路線の80両すべてが冷房車となり、1日から冷房化率が100%となる。2007/08/01四国新聞
※昨年夏は琴平線冷房化率100%、長尾線冷房化率76.2% 志度線冷房化率80.0%ことでんホームページ

 315号の運用は昨日で外れたのか。来週のさよなら運転は是非行きたいなあ……という鉄ネタとは、今回はまた別の話。

80年代は「今年の夏の各線の冷房化率は……」という新聞記事に注目が集まりました

 新聞を読んでいると季節毎の定番記事ってのがあります。夏だと水不足で苦しむ農家だとか、秋だと松茸の値段は今年は高いとか、冬だとこの冬初めてストーブを付けた小学校とかなんとか。
 で、鉄道関係で夏になると決まって報道されるネタで、定番かつ記事の扱いは大きくないけど、その割に市民の注目を浴びていた情報というのがありました。「この夏の冷房化率」という記事です。この夏、自分の利用する路線が快適になるのか、あるいは他の路線と比べてあんまり上がらないのか。鉄道マニアに限らず、鉄道を利用する一般市民の方もみんな食い入るように見ていたものです。
 考えてみると70年代末になっても冷房付鉄道車両というのはあまり多くなかった。国鉄だと、特急10割、急行が9割、国電5割、ローカル線気動車電車客車2%……ってところでしょうか。キハ47とか50系客車、105系、119系と新車なのに付いていないケースも多かった。
 大手私鉄国電より高かったですが、地下鉄車は、地下トンネル内に排気熱が籠もってしまう問題を解決できていないため車両にクーラーを搭載するのが難しく、冷房化率はほとんどゼロに近かった。たまに冷房装置を切って乗り入れてくる私鉄持ちの電車のクーラーを付けてくれる人もいましたがそれはイレギュラーな話だったわけです。
 でも、80年代になると、大手私鉄国電区間などの冷房化率は急上昇していきます。1983年度には国電大手私鉄も7割を突破します。私の実家のご近所を走る片町線(学研都市線)に比較的冷房車が入るのは遅かったのですが、1977年に0%だったのが、ダイヤ改正のたびに京浜東北線とか山手線の冷房付きお古103系がかき集められ、1980年に27%、1983年には56%に上昇します。1985年にはついに90%を突破し、「関西線や横浜線に(冷房化率の上では)勝ったぞ!」と喜んだのを覚えています。

現在の鉄道会社の車両冷房化率は「ほぼ100%」

 いつしか、国電でも私鉄でも地下鉄ですらも新車にクーラーがついているのはデフォルトになりました。国鉄ローカル線でも80年代後半に登場したキハ38やキハ32は最初から付いていました。あの国鉄がそこまでやるのか……と正直、かなり驚いたものです。この時点になってもクーラーを付けずに新製されたのは北海道のキハ54、そして名鉄明知鉄道レールバスぐらいでしょうか。ローカル私鉄も大手私鉄の冷房付中古車導入を進めてきます。
 JRになるとローカル線の既存国鉄型車両にも冷房装置が付けられていきます。コストを抑えるためにバス用クーラーにしたのも多かったですが、そのパワーはあまりにも弱すぎて評判は良くありませんでした。旅先のホームで列車を待っていて、バス冷房付きのクルマがやってくるのを見ると(屋根の形状で分かる)、げんなりしたのを思い出します。いつしか贅沢になっていたんですね。
 1995年の運輸白書を見ると、この年春で冷房化はJR6社で95.5%、大手民鉄15社で99.0%、営団で94.0%となっています。
 さて、いま各社の冷房化率はどれぐらいになっているのでしょうか。新聞記事では最近そうしたのを見かけませんね。電車にクーラーが付いているのは当たり前になったんでニュースバリューがなくなったんでしょう。ですんで、琴電の電車について地元紙が「すべてが冷房車となり、1日から冷房化率が100%となる。」と報じるのを見て、なにか驚いてしまったのもそんな理由があったわけです。
 ちなみに、日本鉄道協会のホームページを見ると、民鉄各社は夏場の快適な輸送サービスのため、車両冷房化を進めており、車両冷房化率はほぼ100%となりましたとありました。
 「ほぼ100%」か微妙な数字だ。非冷房で残っている車両って、今はどれぐらいあるんだろうか。特殊事情のある北海道を除けば、かなり少ないんだろうな。JR西日本と東海、九州、四国は定期運用に入っているのは全て冷房付きになっているはず。ローカル私鉄でも、銚子電気鉄道とか非冷房車ばかりなところもありますが、夏場は冷房車を中心としたダイヤを組んでいるところも多い。でも……ああ、そーいや三岐鉄道北勢線もほとんど非冷房車だったような気がします。昨夏、初めて冷房車が登場したとか言っていましたね。ここも4年前までは大手私鉄だったのに。
 意外に非冷房車が残っているのはJR東日本の東北地区。4年前の8月15日正午過ぎ、今泉駅から米坂線列車に乗ったとき、車内の天井で扇風機が一斉に動いている姿を見て、ある意味で懐かしいというか、カルチャーショックというか、なにか不思議な印象を受けたことを思い出します。この春、キハ110が投入された後の花輪線を廻ると「冷房車登場!」と大書きしたポスターをあちこちで見かけましたが、今でも山田線や米坂線気動車には付いていませんよね。そんな夏も今年で最後になるようですが……

 そんなわけで まあ、私もマニアの一人ですし、旅先で乗るには古い車両がイイに決まっているんですが、こと夏になってくるとそこらの欲求はかなり低下してくる。少なくとも自分が日常利用する電車は全てクーラーを付けておいて欲しい。まあ勝手といえば勝手なんでしょうけど。そこらのギャップを元にして、マニアが懐古趣味を他所に求めてしまう「業」についても展開したかったのですが、それはまた別の話。