定期便廃止間近の波照間空港へ行ってみた。
「鉄道旅行」と名乗りながら鉄道が全く出てこない旅行報告第2弾。今回は、2007年11月いっぱいで定期航空路線の就航がストップしてしまう波照間空港に関する話です。
2007-11-09定期便廃止間近の波照間空港へ行ってみた。
2007-11-09波照間空港の備忘録
2007-11-08今でも文字通り”陸の孤島”となっている船浮集落へ行く。
2007-10-24日本最南端を飛ぶ琉球エアの波照間線が11月で廃止される
鉄道マニアで、飛行機ギライである私が気になるポイントは以下の6点。
- 波照間空港は日本最南端の飛行場
- 琉球エアコミューターが石垣〜波照間間で週4日2往復運航している
- 旅客定員9人というBN-2(ブリテン・ノーマン アイランダー)が使われている
- 雲海の下の低空を飛行するので、竹富島や黒島など八重山諸島の島影とサンゴ礁を眺めながら飛行する
- 波照間空港の施設がなんとももはや田舎のローカルバスターミナルみたいな雰囲気
- でも2007年11月30日限りで廃止される。
以前、波照間へ行ったときは高速船で渡航したのですが、行きも帰りも船酔いしてサイアクの時間を過ごしました。とにかく荒波による揺れが耐えられない。波照間にはまた行きたいのだけど、アレに乗るはできるだけ避けたい*1。一方、「石垣〜波照間の空の旅って眼下にサンゴ礁を見下ろしながらのフライトになるし、遊覧飛行みたいでいいよ」と他の旅行者たちから勧められていたことも気になっていました。廃止間際になって行きたくなると言うのは、なんだか申し訳ないなあとは思うのですが、まあそれはそれ。
波照間線に乗ってみる
波照間行きの飛行機に乗ったのは、廃止1ヶ月前となる10月30日のこと。
小浜島7:35の安栄観光で石垣島の離島ターミナルに着いたのは8時前。前夜は民宿でいっしょになった女の子と、夜中まで"ゆんたく"(おしゃべり)していたのでまだまだ眠い。朝飯食べずに来たんで空腹を覚えるが、できるだけ空港に早く行っておきたい。バスターミナルへ行くと、ちょうど空港線バスが発車待ちをしていたのでそれに乗り込む。空港着は8:20。そのまま日本トランスオーシャン航空のカウンターへ向かう。
フライト時間まで1時間まだある。なのに慌てていたのは、波照間路線の特等席を取りたかったから。使用機材であるBN-2の定員は10人。そのうち機長さんの席が1人分いるから、旅客定員はわずか9人である。低空飛行するから景色がイイというのは先に指摘したとおりなのだけど、座席脇に窓が付いているのは1〜2列目のみ。後ろのシートからは外を見ることができない。ならば、機長さん横のシートである1B席、あるいは2A席か2B席のシートを確保しておきたい。
予想通り、私が一番乗りだった。搭乗券の発券は手書きで行っている。社員さんに1B席を希望するのだけど、「機体が小さいので、ほかのお客様との関係性もあるので……」と、とりあえず2B席が割り当てられる。
その上で、「ではこちらに......」と、カウンター脇の荷物計量用の体重計に乗るように指示される。その上で、私の体重●▲kgという数字、そして1B席キボウというメモを座席表に書き込む。ああ、やっぱり今でもやっているんだ。と、いうのも、
- 車窓がキレイというので座席表の前の方を希望する搭乗客は多い
- 小さな飛行機であるため重量バランスをとらねばならない
- そのため左側と右側に座る搭乗者の重量を測定する必要がある
ということらしい。旅客定員が9人になれば、私は機長さん横の特等席に座ることができる。でも、搭乗客の集まり具合、そして体重の状態では違う席に案内されることもある。
とりあえず出発15分前にもう一度確認してください……ということだったので、ANAのターミナルにある喫茶店で八重山そばの朝食を取って時間つぶしする。
で、9:15に再び戻ってみると……「すみません、お客様が7人だったので2B席でお願いします」との返事。2席分余裕あるので機長さんの隣には乗れないと言うことらしい。あれ、カウンターでは「満席」と書いてあったのに、誰かキャンセルしてしまったのか。あるいはもともと予約枠に余裕を持たせているのか。まあ、そういうことなら仕方ない。
まるで遊覧飛行をしているみたいな波照間線
搭乗フロアーで待っていると、9:25に「波照間行きのお客様は……」と放送がかかる。地上職員が呼びかけに従って7人の乗客が集まってくる。1人だけいらっしゃった年配の女性は地元の方だと思うけど、あとは20〜30歳代ばかり。みんな波照間への観光客なんだろう。
滑走路を歩き出すと、100mほど先にBN-2が待っているのが見える。みんなカメラを取り出してパシャパシャ撮影を始める。
しかし、定員10人か……。むかしペルーのナスカで乗ったセスナ機とあまり変わらないサイズだ。一昨年、ザンビアのビクトリアフォールズで乗ったヘリコプターの方が大きい感じがする。真夏だと冷房はほとんど効かないのだろう。座席横に、うちわが常備されているというのがなんだか笑える。
職員の案内で右側、左側に分かれて機内へ入る。前部座席は折りたたみ式になっており、まずは後部座席の方から乗り込んでいく。そして最後に2B席の私が席に着くと、先頭の1A席に機長さんが乗り込んで、点検表を見ながらタコメーターを確認。そしてレバーや装置を動かし始める。プロペラが回転し始めると、小さな機体は爆音に包まれていく。
「うしろに回して」とキャンディーが入ったカゴを手渡される。あまりにも小さい機体なので搭乗員は機長さん1人だけ。客室乗務員の仕事もせねばならないらしいが、「まもなく動き出すので……」との機内放送はエンジン音にかき消されてしまっていた。
9:30、定刻に機体が動き出す。小回り良く滑走路へ向かい、いきなり加速。ほとんど衝撃なく空へ飛び出す。石垣市街地を周回した後、太平洋へと向かっていく。
眼下には竹富島、小浜島、黒島が一望できる。緑に覆われた陸地。青く彩られた海。海岸線の周囲に広がるサンゴ礁。西表島を過ぎたあたりからは大海原が広がる。
でも、この機体、正直、ボ○い。初就航は40年前以上とは聞いていたが、先頭パネルのタコメーターやレバーは60年代テイスト、往年の松本メカ*2臭さがいっぱいだ。最大速度は273km/h。新幹線500系や700系よりスピードは遅いと言うことか。
波照間空港には搭乗客の3〜4倍の人が集まっていた
9:47、ようやく波照間島の海岸線に到達する。くるっと島影に沿って左旋回すると滑走路が見えてくる。長さ800mというから、関空や成田の5分の1ぐらいということか。
車輪が地面に着地した音と震動を体感すると、波照間空港に到着。9:49、定刻より6分早くの早着。19分の空の旅はあっけなく終わってしまった。
年配の地上職員が近づいてきて、外側からドアを開けてくれる。機体の側に置かれたステップ、いや段ボールサイズの小さな踏み台を降りると、心地よい風が流れていく。
ちなみに、このオジサン、実は波照間島好きの人たちの間では有名な人物なのだ。みのる荘http://park14.wakwak.com/~minoruso/という民宿のオヤジさんなのだけど、空港職員も兼任している。安栄観光の高速船(波照間→石垣)の出航時間が近づくと、ライトバンで港の船着場にやってきてキップの販売を始める。宿の側ではレンタバイク&レンタサイクル屋も運営している。この島、どこに行ってもその元気に働いている姿を見ることができる。
さて、空港ターミナルへ行ってみると、小さな待合室は出発待ちをしている旅客と見送り客でいっぱいなっていた。搭乗客は最大でも9人なのに、小さな公民館レベルの建物の内外に30人ぐらいはいたと思う。この空港、波照間島では数少ない"観光名所"なので、見物の個人旅行者もたくさん集まっている。
しばらくすると、みのる荘のオヤジさんが預けていた荷物を持ってきてくれる。リヤカーで引っ張ってくる……というのが、なんともはやイイ味わいを醸し出している。カウンターでは女性職員が対応に忙殺されていた。こちらでも座席表の作成のために体重測定を行っており、チェックインした搭乗客たちに体重計へ乗るように促していた。前回、見物しに来た時には気がつかなかったのだが、建物の先にはアーチ状の金属探知器があるのに気付いた。他の空港みたいにガチガチの荷物&搭乗者のチェックは行ってはいないようだけど……
次のフライトは10:25発なので、BN2が飛び立つ姿を見送りたかった。でも、ターミナル前の駐車場では、今晩泊まる民宿たましろのオヤジさんが迎えに来てくれていた。ちょっと心残りはあるけれど、待たせてしまうのも悪い。塩害で赤サビの目立つクルマに乗り込むことにした。
空港からクルマで10分ほどで宿に着く。部屋に荷物を置いて、青く透き通り始めた大空を見ていると、東側の空を小さな機体が旋回していくのが見えた。
そんな姿を見ることができるのもあと1ヶ月。
石垣と波照間を結ぶ高速船があるし、荒天時に運休するという点では船も飛行機も変わらない。情緒だけでは経済合理化を覆すことはできないし、補助金べったりの運航を続けるのも問題がある。ならば琉球エアコミューターの路線がなくなるというのも仕方ないかなあ……と思っていたのだけど、こんなステキな飛行機が定期運航を終えてしまうのは、ちょっと惜しい気がした。なにかイイ案が出てくればいいなあとは思うのですが、それはまた別の話。