廃止直前に国交省から事業改善命令を受けた島原鉄道

katamachi2008-02-17

 今年3月いっぱいで島原外港加津佐間が廃止されることになった島原鉄道。その直前に寂しい事故が1つ起きてしまいました。

平成20年1月16日に発生した、島原鉄道(株)の龍石駅西有家駅間の274号踏切における踏切障害事故(踏切無遮断)に伴い、同社に対し保安監査を実施した結果、同社代表取締役社長あてに鉄道事業法第23条に基づく事業改善の命令を発出しましたのでお知らせいたします。
島原鉄道(株)に対し事業改善の命令を発出国土交通省九州運輸局、2008年2月12日

 先月だったか、南目線内で踏切事故があったとニュースサイトで確認してはいたのですが、まさかこんな大事になっているとは。
 事故当時の新聞記事は以下の通り。場所は西有家―龍石駅間にある踏切です。

 十六日午前八時十分ごろ、南島原市西有家町須川島原鉄道踏切で、同市有家町中須川の女性会社員(29)の軽乗用車と加津佐諫早行き普通列車(二両編成、乗客八十三人)が衝突した。(中略)女性会社員と運転士はともに「遮断機は作動していなかった」と話しているという。(中略)
 同日夕、国交省航空・鉄道事故調査委員会の調査官ら四人が現場に入り、事故の状況や遮断機などの作動を管理する踏切制御ボックスを調査。十七日は女性会社員、列車の運転士らから事情を聴く予定。同調査委の佐々木達也調査官は「収集したデータを分析しないと原因についてはっきりしたことは言えない。ただ、遮断機の動きには興味を持っている」と話した。
島鉄と軽乗用車が衝突 けが人なし、遮断機作動せず?長崎新聞、1月17日のながさきニュース

 直後に現場へ入った航空・鉄道事故調査委員会の調査官が言葉を濁しているということはその時点からある程度察しをつけていたのでしょうか。
 さて、上記の改善命令書で国交省が主に指摘した点は以下の2点。

  • 交通信号機が設けられ、踏切通行者の一時停止義務が解除された踏切において、運転保安設備の修理を怠り故障を放置した。(省令第87条第3項)
  • 運転保安設備に障害が発生した場合においても列車等の安全な運転に支障を及ぼさないための機能を停止させる改造を行った

 あれ?と、先の長崎新聞の記事の添付写真を見直しました。なるほど、ここの踏切は通常とは違い、道路側に信号機が付いているタイプなんですね。下のYoutubeの動画も参照。

 通常の踏切の場合、道路交通法第三十三条で、「車両等は踏切の直前で停止し、かつ、安全であることを確認した後でなければ進行してはならない。」とされています。ただ、全国でも例は多くはないのですが、踏切に信号機が付いている場合があって、その場合、一時停止しないで踏切を進行することが可能なんです。一時停止の義務から除外することで、道路を行き交うクルマの流れを妨げにならないようにしているのです。ただ、この信号と踏切の連動の件は本事故とは無関係らしい。
 この件は読売新聞「島原鉄道が踏切装置を無許可改造…故障後放置、事故も」(2008/02/13)とKTNテレビ長崎が詳しく報じていて、

  • 1997年 現場の踏切に原因となった装置を導入

 ※潮水で誤作動が起きる。

  • 2000年 遮断機や警報機を作動させる踏切の装置を無許可で改造

 ※強風の日などに電源が切れるようにスイッチを付ける。一方の電源を切った後も別系統の装置で遮断機や警報機を制御できると判断

  • 2006年11月 正常に作動しなくなる→修理せず電源を切って放置

 ※本来2系統の制御装置があるが、「もう一方の制御装置があるから大丈夫」と判断し、電源を切ったままにしていた。この装置が近くにある交通信号機と連動しているため列車の運行に支障がないように……との判断もあった

  • 2008年1月 踏切事故
  • 2008年2月 国土交通省より事業改善命令。鉄道事業法による改善命令は全国で五番目、九州では初。

という経緯になるようです。
 また、テレビ長崎によると、

 今のところこの保安装置の故障と改造が事故の直接的な原因ではないと見られていますが九州運輸局は極めて悪質だとしてきょう島鉄の塩塚社長に事業改善命令書を手渡しました。(中略)島鉄は問題の踏切を含む路線は3月末で廃止が決まっているため機器の更新はせず終日2人の監視員を置き徐行運転することで対応する方針です。

ということです。さすがにあと1ヶ月半で廃止されるのに大々的な改造はできないと言うことでしょうか。
 噴火以来の島原鉄道の経済状況、海岸線沿いを走っていることによる塩害への対処の難しさ……など様々な事情を想像できます。廃止が決まった区間だし、違法改造と今回の事故との直接の因果関係はないというのも分かった。
 とはいえ、2つある装置の1つを故障したまま放置し、その上にトラブル時に機能停止させるよう違法改造をし、結果的に安全を軽視していたのは紛れもない事実です。これはなににしても言い訳ができない。
 島原鉄道のホームページを見ても、2月17日現在、会社側から何もコメントは出ていません。ただ、同社の掲示板は荒らしの書き込みでいっぱいでした。
 島原鉄道を糾弾するつもりはないのですが、かといってかばう気持ちもない。せめてこの処分をきちんと受け止めて、残る区間についてはきちんと管理点検をやって欲しいなあ……というありふれた言葉しか浮かんでこないのですが、それはまた別の話。