チベット滞在中の日本人旅行者のインタビューとダライ・ラマの政治判断の凄さ

katamachi2008-03-18

 ポッドキャストPodcasti-morley”で、モーリー・ロバートソン氏が、今でもラサにいる日本人旅行者の電話インタビューをしており、それが公開されています。
http://i-morley.com/blog/2008/03/post_1316.html
 聞いてみたけど、凄いなあ。

  • だいぶん沈静化し、軍が旧市街を掌握したとか
  • 14日段階で他都市(シガツェ)からラサ旧市街に戻れず
  • 軍隊がポタラ宮とかで展開
  • 外国人はパスポートチェック
  • タクシーも市バスもメイン通りを走っている
  • 旧市街ではネットができないが、新市街ではできる
  • 口コミや携帯のショートメールでやりとり
  • 11:50に突然、中国語が流れて電話が切れる

 政治的な発言はしていないけど、かなり貴重な話。
 あと、エコノミスト誌の「Fire on the roof of the world - TibetFire on the roof of the worldも貴重な英文レポート
 旅行人のガイドブック「チベット―全チベット文化圏完全ガイド (旅行人ノート)」で日本人旅行者だけでなく欧米旅行者にも驚きと賞賛で迎えられた著者、長田幸康さんの「チベットチベットの今、そして深層」2008.03.15【2008年チベット動乱】よく聞かれる質問集が改めて参考になる。


 さて、この場に及んでも、ダライ・ラマは、独立はしない、オリンピックを支持する、非暴力主義を貫くとし、そして「暴力は誤りだ。反中国的な感情を煽るべきではないし、中国人とは共生しなければならない」と言い切った上で、「事態は制御できる範囲を超えつつある」と、「ダライ・ラマ、「チベット情勢悪化なら引退」 写真5枚 国際ニュース:AFPBB News」としている。なにげに凄いカードを切り出した。
 過激に進めば、コソボイラク、アフガンの二の舞になる。中国軍は本気で鎮圧に来る。独立運動の地域を抱えているインドやロシアも難色を示しかねない。これだけは何とも避けたい。とりあえずは一歩退いた形にしようとアピール。
 と同時に、自身の引退を振りかざしていくことで、中国政府を無理矢理でも対話路線へと引きずり込む気なんだろう。独立しない、北京五輪を支持すると予防線を張っていると、ロシアやアメリカ、EU各国ともチベット亡命政府を批判することはできない。彼が引退したら後はどうなるのか。そこらは誰も予想できない。


 中国政府は、このダライ・ラマの出してきた切り札ににどう応えるのか。
 現段階で、「http://www.people.ne.jp/a/0539dcd91d52453cb7dcb64d1bf8328a」、「http://www.recordchina.co.jp/group/g16789.html」とか過去の対応以上のことをしていない。「中国の人権がいかなる状況にあるのか。それに関する最大の発言権を有するのは中国国民だ」。それは正しいが、「チベット人は自分たちを中国人と思っていない」……という点に考えが及ばない所に最大の問題点がある。もうへりくつは止めればいいのに。
 で、今回、緩めのボール球が投げられたのにどのように対応するかで評価は変わる。

チベット動乱から、来年で50年を迎える。当然、ダライ・ラマ14世も高齢化し、亡命チベット人の間で影響力が低下しつつある。14世が影響力のある間に交渉をまとめるのかどうか、中国当局は決断に迫られている。他の少数民族や台湾の動きをにらんで、安易な妥協はゆるされないし、ダライ・ラマ14世の影響力低下によって独立勢力自体の力の低下を待つという選択もあるのだろうが、それはかえって独立勢力の過激化という危険も伴っている。今回の暴動鎮圧にもかかわらず、オリンピックの開催を支持したダライ・ラマ14世との対話のチャンネルをどう回復するかが、次の焦点ではないだろうか。
サーチナ-searchina.net

という意見に僕は賛同する。
 ここで、チベット側と交渉し、あえて踏み出した発言をすれば劇的に問題を解決かもしれない。どこかで譲歩すれば、軟着陸も可能。でも、東トルキスタンの独立勢力に違ったシングルを与えかねないとリスクもある。ダライ・ラマのボールをあえて見過ごしたら、ボールカウントをとれるかもしれないが、その次、最悪のシナリオが出てくる可能性を否定できなくなる。嫌中の人はいろいろ喜んでいるのだろうけど、暴発すれば日本もヨソ事ではない。
 もう中国側の打てる選択肢はそんなにないはず。追い詰められたのは共産党政府の方であろうとは思うのだけど、それはまた別の話。