阪神なんば線試運転の日に歩く

katamachi2009-03-16

 せっかくデジカメで撮ってきた画像があるんで、もう一度、きちんとした形で報告。

 大学鉄研の先輩に誘われて阪神なんば線試乗会に参加してきました。新聞報道によると、3月13日(金)と14日(土)の2日間。僕は、業界関係者(鉄道他社や関連企業、専門家、マスコミなど)中心だった13日に潜り込みました。

  • 受付 九条駅or桜川駅
  • 試乗 九条〜桜川間1往復
  • 日時 九条発12:19から14:09まで10分間隔で12本(往復で17分程度)

 先輩の都合で、九条12:19発の乗車を目処に地下鉄九条駅へ11:45に集合。待っていると、午前の列車で試乗した人たちが帰ってくる。夕方のニュースや夕刊用に記事を造るのだろう。その中に川島令三も混ざっていた。

試運転のスタート地、阪神九条駅を訪ねる

 さて、地下鉄九条駅には現在改札口が1箇所にしかないが、かつて、西側にもう一つ改札が存在した。1964年10月に開業したときは使用していたのだが、半年後に閉鎖。市交通局は「閉鎖の理由は記録に残っていない」と説明しているらしい。大阪市電から地下鉄への要員転換がうまくいかず利用が少ないんで閉鎖したか、阪神の難波延長構想に対する地元の抵抗感などもあったのかなと想像してみる。17年前、大阪市地下鉄のバイトでこの改札口を掃除するという栄誉もあったのだが、ただの物置と化していた。
 そんな幻の改札口が、阪神九条駅と隣接していることもあって復活することになる。エレベーターの最終点検の真っ最中。
 その出口と道路を挟んだ反対側に阪神九条駅の入口が設けられている。西九条〜九条間の高架線が緑のカバーで覆われたのと同じイメージになっている。

 昨年秋になってもなかなか完成しなさそうな様子だったんで、開業に間に合うのかと気をもんだが、なかなか気合の入った建物になっている。
(参照)阪神なんば線の工事現場を歩く - とれいん工房の汽車旅12ヵ月


 螺旋状になっている階段を降りれば改札口のフロアー。
 券売機の上には新しい料金表がすでに。初乗り200円か……と思いつつ、そういう大阪市営地下鉄とさほど料金は変わらないんだよなあと気付く。近鉄とは割引制度がないんだね。

 自動改札機は5ラッチ。その向こうで受付をしていました。パンと腕章を受け取り、下へ。

 ホームは当然まだ真新しい。
 中心部のベンチは鉄製をイメージしたデザイン。ここ九条が大阪市電発祥の地であることを受けて、市電の車輪である丸をイメージしているんだ……と目の前にいる広報らしい人が説明をしている。
 やがてホームで待っていると、西九条駅よりゴーという音が。高架線から地下に電車が向かっているのだろう。ホームからもそのカーブと勾配の急さがよく分かる。

 試運転時と言うこともあり、ホームのあちこちに社員が配置され、試運転見学客の整理に当たっている。

試運転電車は九条〜桜川間わずか3分

 そして到着。

 阪神1000系6連。西大阪線の定期列車が西九条駅から試運転を行い、なんば線桜川まで入ってくる。そのうち、九条〜桜川間でのみ試運転客を乗せるのだ。
 僕らの乗った車両は11:59に発車。当初聞いていた予定とは違い、10分間隔で運転されていて、そのどれに乗ってもいいということにらしい。
 車内放送は「次は桜川」と伝える。
 あれ、ドーム前駅は......と思っていると、今日は試運転なんで停車はするがドア扱いはしないらしい。
 1kmもない距離だから1分ほどでホームの明かりが見えてくる。
 側面はレンガ積み風のタイル(正確にはレンガを薄くスライスした物)で埋め尽くされていて趣のある感じに仕上がっている。京セラ大阪ドームができる前にあった大阪ガスの工場をイメージしているんだとか。

 次は開業前までの終点、桜川駅。
 15秒ほどで発車。まもなく桜川駅に到着。12:02着。わずか3分の試乗は終わった。

 まもなく車掌と運転士が交替。この後、桜川駅の西側(ドーム前駅寄り)にある引上線に転線する。

 運用としては、

という形になっているみたい。
 そして到着を受けて、反対のホームから九条方面行きが発車する。

 駅名表示は阪神のよく見るタイプ。大阪市地下鉄を見慣れた身からすると、ちょっと違和感も……

 桜川駅の難波寄りには、今の段階では仮設の車止めが。開業前夜までこれを取り外さないのかな。


 あと、気になるのは、マニアの間ではかねてから話題になっていた、近鉄車と阪神車との扉位置の違い。
のような表示がなされている。上は両者の位置がほぼ同じという希有な例。場所によっては1mほどずれているところもあるけど、もうそこらは目を瞑ってしまうということか。
 ただ、阪神車は18m。近鉄車は20m。車両長は違う。
 「これじゃあ、朝の奈良から大阪への快速急行は混雑が激しくなるなあ」とN先輩。阪神車で10両であっても、近鉄車換算では9両程度の長さにしかならない。実質、両数削減みたいなものか。
 80年代ほどではないにしても、今でも朝の快速急行はかなり混み合う。朝の8時台、生駒駅阪神の車両が入ってきたら大変だぞ……とホーム設置の時刻表を見てみた。
 朝の尼崎方面行き。桜川駅7:39発から8:39発までの快速急行5本はすべて「近鉄電車」のマークが印されていた。この間、普通も5本のうち4本は近鉄車。最ピーク時には奈良から難波への列車に阪神の車両を使わないようにダイヤが組まれている
 もう一つ、先頭車の停止位置。


のように、近鉄車は緑、阪神車は白の色違いで"8"とか"10"とかいう数字のマークが記されている。
 このうち、桜川駅・九条駅波方面行きは、ホームがカーブ上に設置されており、死角となる部分が非常に多い。そのためモニター用のテレビカメラは4面を映しだしている。また、難波方面行きの電車は車掌のいる後部車両が同位置になるように停車する。スタッフは安全確認のためと言っていた。
 なんで、場所はばらばら。

 次の電車がホームのどの位置に止まるのか。かなり複雑怪奇になりそう。

大阪都心のブラックホール汐見橋駅はすぐ隣です

 試乗はわずか3分。あまりにも呆気ないんで、外へ出てみる。
 阪神桜川駅の出入口は千日前通の側にある。エレベーターで上に行くと……

と、南海電車の2両編成が。
 そう南海汐見橋駅の駅舎はそのすぐ隣にあるんです。
 こっちは新物。

 南海はモダニズム全盛の時代を彷彿させるコンクリートモルタル造り。もしかしたら戦前製?

 駅の改札口の上には、例の1950年代の観光路線案内図が。ここに来ると、キハ55急行「きのくに」が今にも出発しそうな雰囲気。

 両者が並ぶと、こんな感じ。

 大昔のポストモダン的コンクリート駅舎と最新の地下新線の出入口が並び立つ。そのミスマッチに苦笑する。南海の利用者、カワイソすぎるよ……
 ちなみに九条駅のホーム時刻表下の案内地図。

 阪神桜川駅の乗換路線として千日前線は登場しているのに、南海汐見橋線が割愛されている。改札の案内表示板ではきちんと図示されていたのに、時刻表のほうには阪神のスタッフが書き忘れたのか。ああ、なんという不遇な扱い。
 まあ、なんば線汐見橋線を乗り換える客って、鉄道マニアを除けば、一日何人いるんだ……とは思うんだけど。



 もう少し周辺を歩きたかったんだけど、雨もちょっと強くなってきたんで、早々に地下内に。
 やってきた電車に乗って九条駅へ戻り、そこで仕事場へ急ぐN先輩とお別れ。もう一度、乗ってもいいということなんで、僕は桜川駅までもう1往復する。

 見ていると、次の試運転列車が到着。10分毎にやってくる。試乗客を見ていると、マニアっぽいのは僕らだけ。
 観察していると、試乗している人たちは、当然、近鉄阪神の社員さんっぽい人が多いんだけど、新線の施設について品定めしている声を聞いていると、南海や大阪市交通局など在阪私鉄の社員さんも多数招かれているみたい(制服に上着をまとっている人も多かった)。あとは議員さんとか役所関係の人。設備関係の人。土木関係や電鉄の業界関係の人。いろんな人たちがやってきている。
 ただの試運転にしてはかなり大々的にお披露目をしているということがわかる。実際、2日間で招待客が1万人と言うことだし。
 もう一度、往復して1時過ぎに退散。雨が小降りになってきたんで、九条駅から西九条駅までまた地上を歩いてみることにする。正直、地下線を往復しているよりも、新線沿いに歩いていたときのほうがずーっと楽しかったりするんだけど、それはまた別の話。<参考>