えちぜん鉄道のLRT化と福井駅高架化問題

katamachi2007-01-22

 北陸新幹線福井駅整備に伴うえちぜん鉄道福井駅への乗り入れについて、福井県は17日開かれた県議会全員協議会で、三国芦原線田原町駅福井鉄道福武線へ乗り入れ、路面電車化する修正案を提示した。勝山永平寺線は従来計画通り高架乗り入れで、今後、国や沿線市町、鉄道事業者などと協議し、2月議会で方針を決定する。
北陸新幹線:福井駅整備計画 えちぜん鉄道・三国芦原線を路面電車化 毎日新聞1月18日朝刊

 えちぜん鉄道三国芦原線LRT化して福井鉄道へ乗り入れるプランって、ただのホラ話かと思っていたのですが、本当にやるんですかね。福井新聞でも、えち鉄福井駅乗り入れ 県が新案検討 勝山線だけ高架にと報道されています。
 これにより、福井〜福井口田原町三国港間を走っている三国芦原線の電車は、LRT化の暁には武生新福井駅前〜市役所前〜田原町三国港間への運転系統に改められると言うことでしょう。興味深いプランです。
 ただ、この記事の後段、「えちぜん鉄道高架化に伴う費用は100億円から95億円に減る」「別途LRT化費用として60億〜80億円が必要」というところが気になります。

富山ライトレールほどの補助は期待できない……

 この導入の前提としては、同じく北陸新幹線の高架化絡みで誕生した富山ライトレール富山港線の動きがあったというのは周知のところでしょう。
 ただ、富山ライトレールの建設費は58億円かかりましたが、そのほとんどは富山港線の連続立体交差事業に関連する費用を流用しています。しかも国からは連続立体交差事業からの負担金33億円、LRTシステム整備費補助7億円、路面電車走行空間改築事業8億円が割り当てられ、さらにJR西日本からは鉄道資産を無償譲受しているわけで、事業者負担は13億円で済んだとされています(最終的な負担額はまだ未算出)。
 一方、えちぜん鉄道LRT化にはいくらぐらいかかるのでしょうか。LRT化で安く上がる高架化費用5億円分、そしてLRT化の補助金が富山と同程度の15億円があったとしても、残る40〜60億円は福井市福井県が負担する計算になります。地元の自己負担比率が多すぎます。

えちぜん鉄道北陸新幹線は二層構造で福井駅に乗り入れる計画だった

 京福電気鉄道が運営した頃の計画では、高架化された場合、京福線はJR線と同じ二階部分に乗り入れ、新幹線はその真上の三階部分に入る構造になっていました。
 現在でも掲げられている福井県福井駅付近連続立体交差事業の計画書を見ると高架化の対象となっているのは、

ということになっていたんですね。
 ところが、2001年におきた事故で京福線は全線運休となり、2003年に福井市などが出資する第3セクターとして再生しました。
 その頃から、福井県議会の一部は、えちぜん鉄道の地平線での運行を主張し始めるのです。

というのがその計算だったようで、2002年1月に周辺市町村議会の合意も取り付けます。
 ただ、えちぜん鉄道が高架化されないとなると、国からの補助金が減額されてしまう……という事態に直面しました。地元負担は5億円ほど減少するだけというのです*1。また、福井市も地平線での運行に反対します。地元負担比率を巡る県側との対立があったようです。

三国芦原線の高架化を取りやめても5億円しか安くならない

 ここらから事態がややこしくなります。そこらの経緯と利害関係者の思惑の違いは、福井新聞の2003年12月の特集が詳しいのですが、県側にもいろいろ意見があったようで、たとえば2004年12月の県政便りでは、

福井駅周辺では、2階がえちぜん鉄道、3階が新幹線という構造で計画されています。国土交通省では、北陸新幹線えちぜん鉄道の高架化と一体的に工事することで工事費の大幅な縮減が可能としており、今がまさに着工の時期です。

と高架化に国土交通省のお墨付きがあることを示しています。福井市国土交通省が高架化賛成。福井県会の一部が地平線推進。福井県庁、えちぜん鉄道あたりは本音は高架化希望だけど、とりあえずは静観。そんなところだつたのでしょうか。
 その後、政治情勢の変化もあって、結局、新幹線の高架線は、えちぜん鉄道とは別に福井駅2階部分へ乗り入れることになりました。2006年3月の福井市長選で新しい市長が誕生したことも影響したのでしょう。
 となると、今度はその新幹線高架化用の土地の捻出が課題となってきました。そこで生まれたのがLRT化。そこらの経緯は富山ライトレールと同じです。
 今度のLRT化案による見直しで、三国芦原線福井口〜西別院間と福井口駅の取付部分の高架化が不要となります。福井〜福井口間は単線になるということで、これで新幹線も別の高架線で福井駅に乗り入れられます。
 と言っても、勝山永平寺線はそのまま福井駅に乗り入れるわけであり*2、しかも高架化費用は5億円しか削減されない。高架化中止で30億円が浮いた富山の例とはかなり状況が異なります。さらにLRT化で60〜80億円余計に必要ならば、当初計画通り高架線のままでいいじゃないのとも思うのですが、さてどうなのでしょう。平成19年度予算で国土交通省補助金が認められたという話も聞かないですし、はたして具体性のある計画なのか疑問にも感じるのですが、それはまた別の話。

*1:民主党衆議院議員笹木竜三のHP

*2:「(注 勝山永平寺線は)新幹線区間(八百メートル)を暫定利用し、新幹線開業後は、並行在来線に単線で乗り入れることなどを柱としている。」(福井新聞)というのは、東海道新幹線が建設された際の阪急京都線との故事を思い起こさせてくれて興味深い。1963年の8ヶ月間、阪急電車が新幹線の路盤を走っていた。大山崎付近の新幹線の高架線が竣工した後、隣接する阪急京都線大山崎〜上牧間の高架線が完成するまでの暫定処置である。今回の福井駅のケースとよく似ている。ただ、そんなところに悦びを感じるのは鉄道マニアだけでしょう。