「神話高千穂トロッコ鉄道」構想断念と東国原英夫宮崎県知事

katamachi2007-07-05

 2005年の台風被害で経営を断念した宮崎県の第三セクター高千穂鉄道高千穂町)は28日、同町で株主総会を開き、現在、休止を届け出ている高千穂―槙峰間(約20キロ)について08年1月1日付で廃止を届け出ることを明らかにした。同路線の運行再開を目指す民間の新会社、神話高千穂トロッコ鉄道高千穂町)への鉄道事業の譲渡のめどが立たないため。
日本経済新聞、2007年6月29日

 さて、2005年9月の水害から2年近く休止を迫られてきた高千穂鉄道。すでに延岡〜槙峰間は廃止されてしまいましたが、休止扱いにしていた槙峰〜高千穂間も2008年1月1日付で廃止にしてしまうと言うことです。その前提となっていた、「神話高千穂トロッコ鉄道」という会社が設立の見込みがたたないというのがその理由。<参考>
2006-09-05高千穂鉄道の再生の切り札「トロッコ神楽号」
2007-02-08「神話高千穂トロッコ鉄道」設立に一歩前進
 毎日新聞「協力は惜しまない」と述べたが、保有する資金(約4300万円)や清算事務の手続きなどの関係から「08年1月には廃止届を出さなければならない」と明言した。とやや踏み込んだ紹介をしています。

 先週、「神話高千穂鉄道支援広がれ 募金箱を製作」という記事を見ました。今頃、募金箱500個を作って募金促進.....ということは、ぜんぜん集まっていないんだなあと思い、同社、いや設立発起人たちのホームページを見たらリニューアルされていて、それまでの経緯や報告は全て消えていました。関係者から追求されるのを恐れたのでしょうか。毎日の記事には「支援金募金箱を作り、全国に発送したばかりなのに納得できない」というコメントもあります。そこらの関係者間の事情も別の意味で気になる。
 ちなみに、資金集めは2億円を目標としているようですが、2007年5月からスタートし、6月末現在で2000万円しか振込がない模様。先立つものがなければ事業を進めることもできない。同社のブログには「期限が少しのびましたが、最後まで鉄道再開に向け努力してまいります。」という赤書きの書き込みもありますが、今年いっぱいで1.8億円が集まるとは少し考えにくい。しかも、同社の佐藤公一社長が退任され、新たに商工会の代表が新社長に就いたとか。病気が理由のようですが、そんな状態では事業が進捗するとは思えない。
 先に「2007-02-08「神話高千穂トロッコ鉄道」設立に一歩前進」を書いたときに参考とした記述は全て抹消されているのですが、あのときは、「出資金5000万円は集まった」、「橋梁の腐食防止対策の塗装費約6.6億円が必要」とか書いてありました。高千穂町が、税負担を軽くするために鉄道施設を無償譲渡するという報道もありました。でも、その5000万円を負担する人すらいなくなった……というのが現状なのでしょうか。
 いや、宮崎県庁とかがポンとカネを出してくれれば話は別です。あるいは、県出資の第3セクターで鉄道を運営するとかの言葉があればいいんです。国土交通省がトロッコ鉄道構想に難色を示しているのも、持続可能な鉄道経営を行うため、そして事故や災害など不足な事態に対応できるためには"経済的担保"が欲しいからでしょう。災害で不通となった鉄道を復活させるというのだから当然です。
 で、今の東国原英夫知事さん、先の宮崎県知事選でも話題にしていましたね。当選後、一生懸命、鶏肉の販売に精を入れているようですが、高千穂鉄道については一言も語ってはいないようです。言及すればドツボにはまるのは目に見えているから。「鉄道を残そう!」との言葉は聞こえはイイですが、その責任もまた重大です。採算が取れるかどうか不明だし、完全な観光鉄道に自治体が関与することには批判も多いでしょう。それでも、必要だと本気で思うのならトップダウンで決めればいい。そこらの政治決断を今の知事さんができるとは……思えない。あれだけ全国区で人気が出れば、人から嫌われる施策を打ち出すこともできないだろうに……と思わなくもないのですが、それはまた別の話。