市街地を走行して共産党本部へ向かう戦車部隊と超美少女兵士@ブルガリア・ソフィア

katamachi2008-05-10

 ルーマニアからブルガリアに再入国して、世界遺産のリラの僧院を訪れて首都ソフィアに戻ってきたときのこと。
 市内中心部で土産を買い、ブルガリア正教会を背景に市電を撮影。その後、社会主義っぽい建物を求めてのツム百貨店や旧共産党本部など旧政権時代の建物が林立する広場の周辺を散歩してみた。うーん、ここらの威圧的でモダンな建物のテイストは今でも昔と変わらない。
 で、この街にいるのも最後だし、なにかええものでも食べに行こうかと、中心街にほど近い大通りのブルガリア料理のレストランへ行った。メニューを見ると、メインだけでも12〜20ドルぐらいするから予算は完全にオーバーするが、まあ社会人バックパッカーだし、そこらは許容範囲。かつて欧州でもかなり安めで旅できたブルガリアもユーロ高と経済成長で状況が変わってきている。
 で、19時過ぎ、サマータイムでまだ薄暮の状態の店先で「胡瓜のヨーグルト和え」という日本人的にはベタなブルガリアテイストの前菜を食べていたときのことだ。大通りの並木道に面した席に一人座っていたのだが、突然、目の前の道路が地響きを立て始めた。なにが起きたのか。
 そして目の前を黒い塊が横切っていく。キャタピラに黒い砲身。戦車だ。戦車が街にやってきた。
 ナイフ・フォークを動かす手を止めて、ついつい見入ってしまう。ソフィアの中心街と言ってもたいして栄えているわけでもないが、そのメインストリートを威風堂々と戦車部隊が通過していく。それが何台も。その後、装甲車や対戦車砲車、ミサイル運搬車……と隊列が続いていく。
 夢にまで見ていた市街地を行く戦車部隊の走行シーン。再び共産党政権へと戻ろうとする一派によるクーデターか。戒厳令でも敷かれたのか。そんな淡い期待を持っていたのだけど、一瞬、彼らの隊列に目をやったウエイターはすぐに目をそらし、黙々と仕事を続けた。
 彼に聞いてみた。
「これは珍しいのか?」
「ああ、でも、たまにはあるよ」
「何が起きたのか?」
「さあ、今日はイベントでもあったか」
「写真は撮ってもイイの?」
「それだけは止めてくれ」
 トラブルにだけは巻き込まれたくないと言うことか。まあ、行進には警察も同行しているようだし、彼らに因縁を付けられたくないという気持ちは分からないわけでもない。
 とにかくディナーを急いで掻き込んで、支払いを済ませ、戦車の向かっていった方向へ歩いてみた。
 さっきまで市電を撮影していた小綺麗な大通りだけど、いまはSP(Security Police)とMP(Military Police)の腕章を付けたポリスたちで埋め尽くされている。
 それを追っていくと、旧ソビエトっぽいモダニズム建築に囲まれた広場に戻ってきた。あの戦車部隊はここを取り囲んでいる。
 兵隊たちはライフルを構えて直立不動だが、周囲にポリスは警備もテキトーに談笑している。殺気だった雰囲気はない。クーデターの線は消えたか。歴史的瞬間に立ち会えなくて残念。
 とにかく、側にいたMPに声をかけて、戦車を撮影する。ここらは今でもロシアのコピー製品を使っているのかな。実際の戦闘に出たらすぐに壊れてしまいそうな、やられキャラっぽいタイプだ。


 その砲身の先にあるのは、かつての共産党本部があった建物だ。今はなにかイベント会場や政府の施設として別な用途に使っているようだけど、そんなことをしてもいいのか。

 かつては社会主義を誇示する品物が並んでいたソフィア最大の百貨店であるツム百貨店前。そこに隊列が続く。今では欧米の超一流ブランドの香水や衣料を扱う店が入居するファッションの最先端の場になっているのだけど、これじゃあ店も商売あがったりだろう。


 僕が撮影を始めると、携帯電話を出して記念撮影をする地元人も増えてきた。一応、警備のSPとMPには撮ってもいいのかとボディランゲージで意志を伝える。ノープロブレムという人もいれば、「ニエット」とすごむ人もいる。その基準がよく分からないが、まあ元共産国だし、無茶をするのはやめておこう。
 でも、街の若い人は英語を喋れる人も少しはいるけど、軍隊では今でもロシア語が基本なのか。キリル文字という点でブルガリア語とロシア語は似通っているし、昔は「ソビエト連邦の16番目の共和国」と揶揄されるほどソ連ベッタリの属国みたいなところだったという歴史的背景もある。
 この隊列の後ろの方に装甲車が何台か並んでいた。そこらには女性兵士たちも搭乗している。

 その中でも一人、小柄で目鼻立ちのまとまった子が一人いた。こちらの人は二十代後半になると急速に老けてくるのだけど、長髪を後ろでまとめた感じがこざっぱりしていて好印象を抱かせる。まだかなり若いんだろう。なんだか、日本のロボットアニメに出てくるような超美少女だ。

 日本からやってきたオタクの一人として、これは撮影しておかねば……とカメラを構える仕草をするのだが、拒絶の意志を示され、顔を横に向けられた。ああ、惜しかったなあ。この子の写真をアップすれば、少なくとも日本のミリタリーオタクな人たちならみんな喜んだろうな......と思うのですが、それはまた別の話。