ラクテンチ(@別府)ケーブルカーが8月末で廃止か?

katamachi2008-07-15

 別府市の老舗遊園地「別府ワンダーラクテンチ」を経営する遊具メーカー、岡本製作所大阪市)の岡本昌明会長は7日、遊園地内で会見し、同社として8月末で経営を打ち切る方針を明らかにした。
別府ワンダーラクテンチ:8月末で経営打ち切り パンダ誘致白紙も一因 /大分毎日新聞 2008年7月8日

 大分県別府にあるラクテンチケーブルカーがもうダメみたい。
 このケーブルカー、「ラクテンチ」(楽天地)という遊園地の中にあるケーブルカーで、基本は入園料を払わねば乗車することができない。ある意味で遊具みたいな"乗り物"なんですが、かつては地方鉄道法の免許、今も鉄道事業法の許可を得て運営している鋼索鉄道(ケーブルカー)なんです。
 廃業の理由の一つとして、

とありますが、一頭1億円ですか、そのチャーター料を払って起死回生の一発になったかというと、ちょっと疑わしい。むしろ、

  • 本業の遊具製造でも苦戦し、同社は今年3月期の決算で創立以来初の赤字約8000万円を計上。うち半分はラクテンチの赤字だった

の方が大きいんでしょう。

ラクテンチケーブル

  • 1929年9月 別府遊園地索道が雲泉寺〜乙原間220mを開業
  • 1930年9月 別府遊園鋼索鉄道に改称
  • 1943年度 運転休止
  • 1950年6月 別府鋼索鉄道の手で運転再開(距離254m)
  • 1954年12月 別府国際観光が譲受
  • 60年代 年間80万人の利用者
  • 2003年11月 岡本製作所が譲受、休止して施設リニューアル
  • 2004年3月 運行再開

 このラクテンチケーブル。先述のように乗車するためには、1000円也の入園料を払わねばならない。

 当然、ヨソから別府に観光に来た人たちはこの施設をみんなスルーするのでしょう。わざわざ九州に来てまで遊園地に行きたいと思わない。実際、数年前、僕が慰安旅行でここを組み入れようとしたら、他の社員さんから猛反対を食らいました(当たり前か)。
 でも、鉄道事業法の「鋼索鉄道」だから、日本国内の全鉄道を完乗したい連中は必ず行かねばならない。僕も1991年春に行きました。別府からバスに揺られて遊園地に入り、お目当てのケーブルに乗車。それだけで1000円というのももったいないんで、タダで行ける園内の温泉施設(一応、別府ですから)とミニ動物園を訪れました。60年代テイストいつぱいの当時でも古くささを感じさせた施設を見ながら、「このケーブルというか遊園地。いつまで続けられるんだろう」としみじみ感じさせられたものです。
 事実、60年代には年間80万人も集めたそうだけど、2000年頃から、ラクテンチの廃業話がネットのニュースで何度か見受けられるようになりました。もうダメなのかな……と思っていました。東京や大阪でも前世紀から続いてた伝統ある娯楽施設が次々と潰れているのに、勝算はあるのかな、誰も手を出しにくいのでは……と。
 ところが、大阪の遊具器具メーカーの岡本製作所が、突然、名乗り挙げて、2003年に事業とケーブルカーを継承。リニューアルオープンしたわけです。これに驚いた鉄道マニアは少なくなかった。
 04年度14万人に回復。でも、07年度は7万人。ちょっとキツいんですかね。読売の記事は社員の解雇と転職先の話も載っている。県外の2社と交渉中とありますが、もうリミットまで1ヶ月もない。「富士」を使って大分まで往復してみようかなと考えている最中です。


 「ケーブルカー冬の時代」はまだまだ続きそう。
 ラクテンチの遊園地が戦前にオープンした頃は、"ケーブルカーに乗車する"ということが一つの観光目的となっていました。鉄道そのものが観光施設だったわけです。今のジョイフルトレインなんかの先駆けですよね。
 50年代から60年代までもそうした雰囲気は残っていました。もちろん、戦前来の箱根や高野山など風光明媚な山の上や神社仏閣へのアクセスルートとしてケーブルカーを敷した会社が多かったですが、それだけではなく、天橋立や有馬(以下の写真は有馬兵衛向陽閣にあったケーブル線跡)、箕面紀伊勝浦、新宮などの旅館にケーブルカー(地方鉄道法による)が設置されたこともあります。

 ところが、70年代になって舗装道が地方にまで及ぶようになると事情は異なってくる。バスが目的地まで乗り入れるようになった代わりに、次々とケーブルの廃止が行われていく。この40年間、地方鉄道法によって開業したケーブルは青函トンネル記念館の一路線のみ。最近では、岩日北線跡と「とことこトレイン」。 - とれいん工房の汽車旅12ヵ月三好市(旧西祖谷山村・東祖谷山村・池田町)にある鉄道モドキの「遊覧鉄道」めぐり - とれいん工房の汽車旅12ヵ月のように、遊園地の遊具のちょっと豪華版なのような施設"遊覧鉄道"が主流になっています。


 次は、どこかな。ずーっと気になっているのが、奈良県近鉄生駒鋼索線(生駒ケーブル)なんです。

 ここ、冬季になると、今月末でまた一つ特殊鉄道(ロープウェイ)が消えていく。 - とれいん工房の汽車旅12ヵ月で書いたように、2006年冬から宝山寺生駒山上間は冬季に1日11往復(2時間毎)運転に削減。翌2007年からピークでも最短40分毎運転に削減されているんです。ケーブルカーとしては過去の廃止線と比べても極端に本数が少なくなった。スカイランドいこま(生駒山上遊園地)が冬から春まで営業を止めているし、施設も次々と閉鎖、解体されている。和歌山電鉄なんかよりはるか昔から"オルガン"や"ケーキ"をイメージキャラクターにして、なんとも可愛らしい(僕から見ればグロテスク)な車体にリニューアルされた。でも、お客さんは増えない。いつまで耐えられるのだろう……と気にはしているのですが、それはまた別の話。