廃止された鉄道と生き残る鉄道。鉄道車両を巡る争奪戦
この9月に入って、廃止された第三セクター鉄道の所有車両についての争奪戦が激しく展開されている。
ターゲットとなっているのは、今年春に廃止された三木鉄道の車両。
三木市の第三セクター「三木鉄道」は1日、競売するディーゼル車2両の入札結果を公表した。02年度に導入した車両は第三セクター「樽見鉄道」(岐阜県本巣市)が最低公示価格(3300万円)以上で落札した。99年度の車両は最低公示価格(2200万円)を下回り、不調に終わった。
三木鉄道:車両競売、岐阜・樽見鉄道へ1車両 /兵庫毎日新聞9月2日
三木鉄道<車両売ります>
- ミキ300形-105 1両(2002年製) 最低公示価格3300万円以上
- ミキ300形-104 1両(1999年度製) 最低公示価格2200万円以下
- ミキ300形-103 1両(1999年度製)
△保存? 売却対象? 未決定
と、いうことに現状はなっている。樽見鉄道は落札した車両を12月20日までに自社へ運ぶようで、富士重工LE−Car?のハイモ230-310形を置き換えることになるんだろうか。
20年経つと陳腐化が目立つ軽快気動車の後始末
今後、90年代半ば以降に製造された車両の争奪戦が各社で始まってくるのかもしれない。その背景には、
という2点がある。
昔の国鉄型気動車だと、車体だけは軽く30年、40年は持つのだけど、80年代に造られた車両はコスト削減を目指したゆえに"安物"の車両となってしまい、車体や部品が陳腐化するのが早すぎた。「腐食した鉄道車両のボディーを見る - とれいん工房の汽車旅12ヵ月」でも書いたが、車体に赤サビが浮いていて、ちょっと目の当てられないような感じになっている。
かくして、わずか20年目にして早くも時期車両探しに奔走せねばならなくなった。この旧三木鉄道の車両に関しては、昨年段階で、北条鉄道・北近畿タンゴ鉄道・信楽高原鉄道・茨城交通(ひたちなか鉄道)・樽見鉄道・水島臨海鉄道の6社が視察に訪れていたという。わずか2両では置き換えの数としては足りなかったり、勾配に対応できなかったりして撤退したところもあって、最終的に参加したのは上の三社。でも、安い方の車両には公示価格を上回る値段が付かなかった。それぞれの懐事情の厳しさが垣間見られる。
ちなみに、他社も欲しがらないような80年代の軽快気動車は旧鹿島鉄道のKR-500形のように解体されたり、静態保存されたりするのがほとんど。でも、その一部がミャンマーに売却されているのは有名な話だ。伊勢鉄道や名鉄三河線、甘木鉄道、旧ちほく高原鉄道の車両がNGO等の手で海の向こうへと運ばれていった。
ただ、三木鉄道のように90年代半ば以降の車両だと、国内でも欲しがる鉄道がある。
ひたちなか鉄道<車両買います>
中古車両 本年度購入を断念入札結果など理由 ひたちなか海浜鉄道茨城新聞2008/09/18
- 必要車両3両
老朽化の激しいキハ20系5両を代替
△「車両の処分方針を決める検討委員会のメンバー二人が岩手・宮城内陸地震で被災・死亡したため、方針決定が先送りになった」*1
- 旧三木鉄道
×入札不調
高千穂鉄道<車両売ります>
高千穂鉄道:車両7両は解体へ トロッコは有償譲渡先探し−−取締役会毎日新聞、2008年09月09日
高千穂鉄道/沿線自治体、跡地活用を模索朝日新聞、2008年09月18日
- 所有車両7両(一般車)
×うち5両は被災後3年間屋外に放置されていて修理に600万円/台→廃止
△残る2両は未方針
※日之影町は、2両を譲り受け、日之影温泉駅跡で簡易宿泊施設やカフェに改装したい。ただ旧高千穂駅の車庫から現地への輸送費が1300万円。
※高千穂町は、2両を譲り受け、旧高千穂駅を「鉄道記念公園」とし、列車の展示や車庫の見学などを想定。鉄道資料館も検討
※高千穂あまてらす鉄道も、2両の譲渡を申し出ている。列車を公園内の乗り物"遊具"として走らせる構想を示しているが計画書を提出せず先行き不透明*2。
- トロッコ列車2両(2003年購入)
○有償譲渡を前提にJR九州と協議→ダメなら入札
旧くりはら田園鉄道<車両売ります>
- 所有車両3両(KD95形気動車)
△今後は不明。
ひたちなか鉄道が検討していたと言うことは売却の予定もあったと言うことだろう
ただ、地元で静態保存(動態も?)の話もあると思われ、それゆえに検討委員会が使い道を検討していたのだろう。
島原鉄道<車両売ります>
- トロッコ車両(オープンカー)
○平成筑豊鉄道門司港レトロ観光線
これは目出度く商談が成立したケース。田野浦公共臨港鉄道での特定目的鉄道でのイベント列車用に使われる予定
なかなかそれぞれの思惑を合致させるのは難しそう。
ならば新車を買っていきたいところだが、各社とも厳しい経営を迫られている。錦川鉄道はここ数年で20年前の車両を新車に置き換える旨を発表しているが、その代わり、運転本数を減らすことで、車両の数も削減させている。いすみ鉄道や長良川鉄道もまだLE-carをそれなりに抱えているし、それよりワンランク上のLE-DCシリーズを入れている信楽高原鉄道なども次の検討を始めているのだろう。
こうしたやりとりを見ていると、ローカル鉄道の活性化が叫ばれて法制化が進められている中、各社とも厳しい対応が迫られているんだなあという気がするけど、それはまた別の話。