運転本数削減の報道が相次いだ近鉄と京阪
近畿日本鉄道が平成24年春までに、2000両近い保有車両を約1割減らす方向で検討していることが16日、分かった。
近鉄 平成24年春までに車両数1割削減へ産経2010.10.16
というニュースが先週末に話題を呼んだ。
- 「平成24年春までに、2000両近い保有車両を約1割減らす方向で検討」
- 「24年春にダイヤを大幅に改正」
- 「準急を中心に運転本数を減らす一方で、急行の停車駅数を増やして利用者利便を確保」
- 「特急料金に割引制度も検討」
- 「老朽化した車両を中心に順次廃棄」
- 「近鉄の輸送人員は平成22年3月期で約5億7000万人。ピーク時の4年3月期(約8億人)に比べて約3割減」
というのがその中身。
近鉄が2012年までになにかダイヤ改正をするというのはすでに報道されていた。伊勢志摩特急の神戸乗り入れとか目出度い構想ばかり伝えられていたが、そちらは本当になるかどうか怪しい。
逆に、一般列車の削減か。特急車はかなり減らされてきたが、運転本数も抜本的に減らされていくのか。
近鉄としても、「近鉄グループ経営計画(平成22年度〜平成26年度)」
http://ir.nikkei.co.jp/irftp/data/tdnr2/tdnetg3/20100512/698bok/140120100511001988.pdfがすでに出ている。バラ色の経営計画の中に、ポツリと
- 抜本的ダイヤ見直し
- 需要に応じた適正なダイヤの作成
とまとめている。
確かに、近鉄奈良線・大阪線・南大阪線・京都線が混み合っていた時期もあったし、それを体感したけど、この十数年の景気低迷でそれもそれなりに緩和されてきた。90年代によく利用していた奈良線も、快速急行や急行はともあれ、準急は......微妙なお客さんの数だった。
寂しい話ではあるが、ここ数年、大阪圏では昼間や夜間を中心にダイヤの整理、運転本数減があちこちで実施されている。昨年のJR西日本のダイヤ改正はかなり思い切ったものだった。サービス面では悪くなるのは決まっているが利用者が着実に減っている中、あらゆる意味で余裕がなくなった。所有車両の総走行距離と要員カットは費用削減のために早く取り組まねばならない。そういう雰囲気が上層部にあるのは否めない。
不思議なことに、週明けになって近畿日本鉄道は、こんなプレスリリースを出している。
一昨日、一部の新聞紙上で、当社の施策として、保有車両の1割削減や、準急の廃止もしくは大幅削減といった報道がなされましたが、このような方針は決定しておりません。以上
当社ダイヤに関する一部報道について
http://www.kintetsu.jp/news/wfiles/20101018ichibuhodo.pdf 平成22 年10 月18 日
さて、どうなんだろう。
産経も根拠がなく報道したわけではないはず。
マル秘の情報を嗅ぎつけて市民に知らしめたという格好イイものではなく、広報なり役員なりの近鉄の責任ある立場の人間から情報のリークを受けての「スクープ」だったのだろう。おたくはいつも頑張ってくれるから、というご褒美だったのか。記者クラブ的な体質が鉄道会社に関する報道でも多かれ少なかれあるんだろうな。
産経は「検討していることが16日、分かった」、近鉄は「このような方針は決定しておりません」。近鉄としても検討をしていることを否定していない。
でも、こうしたマイナスの情報を2年も前からバラすというのはいろんな意味で褒められたことではない。対組合的にもいろいろあるんだろうな。株式市場にも影響があるから週明け月曜日になって打ち消しに走ったのだろう。これからややこしいことになるのかな。
株価は18日朝、266円だったのが272円となっている。
ちなみに、お隣の京阪電気鉄道に関してもよく似たニュースが出ています。
京阪電気鉄道が事業の選択と集中を加速する。来年春から運転本数の削減を柱とするダイヤ改正を実施。1日にはタクシー事業からの完全撤退を発表した。
京阪電鉄、選択と集中を加速 ダイヤ改正で本数減日経2010/10/02(ブクマより)
京阪電気鉄道の桜井謙次副社長は18日、来春のダイヤ改正に伴い車両数を3%減らし、13年度までに鉄道事業の従業員を1割削減する方針を明らかにした。桜井副社長は「コスト削減を徹底する」と、従業員の削減などで年間経費の約1割に相当する約10億円を削減する。
京阪電鉄:来春から車両数3%減 従業員も1割削減へ毎日2010年10月19日
- 車両は今春17両減らしたのに続き、来春約20両減らす
- 古い車両は廃棄
- グループ従業員数は約2000人から1800人体制
京阪もマイナスの情報だらけではあるのだけど、非運輸事業の基盤強化、京都地下鉄の委託などの策も同時に提示している。株主や市場へのアピールとしてはこっちの方が賢明なのかなあとも思うけど、それもまた別の話。