37年間放置プレイされていた姫路モノレール手柄山駅がついにオープン

katamachi2011-04-27

 1年半前に取材で訪問した姫路モノレール手柄山駅がついに博物館内施設としてオープンするそうです。
姫路モノレール手柄山駅跡で封印されてきたロッキード式モノレールを見る。 - とれいん工房の汽車旅12ヵ月
姫路モノレールの一般公開について姫路市手柄山交流ステーション・モノレール展示室

 兵庫県姫路市は、手柄山中央公園姫路市西延末)で、1966年から8年間だけ走った市営モノレールの車両を展示する施設を整備し、27日、報道関係者に公開した。一般公開は29日からで、入館無料。(中略)市は、旧駅舎を復元し、保存していた車両2両を並べ、当時の広告看板や時刻表も復刻。運転席では、当時の風景の映像や走行音を楽しめる。
8年だけ走った幻のモノレール、29日から公開読売新聞2011年4月27日

 「市は、旧駅舎を復元し、保存していた車両2両を並べ、当時の広告看板や時刻表も復刻」と記事内にあるけど、あのモノレールって「保存」していたんじゃなくて、解体できなくて単に放置していたんじゃないのかなあ。時刻表や看板も同様。
 そもそも、今回の突然のモノレール復活劇も、姫路市役所ならではの複雑な関係があるんですよね。

姫路市役所にとっては悪夢であったモノレール

 姫路モノレールが開業したのは1966年。姫路市手柄山で開催された姫路大博覧会へのアクセスとして開業したんです。姫路駅から手柄山駅まで1.6km
 ただ、営業区間が短いが故に当初から経営難に見舞われ、市財政にとってかなりの重荷となったんですよね。姫路政界を二分する大騒動となります。
 建設を推進した石見元秀姫路市長はその効果を強調するけど、明らかに客が乗っていないのは市民にもバレバレ。唯一の途中駅である大将軍駅が休止扱いとなってしまう。
 そして、翌1967年4月の統一地方選で石見市長は落選。大きな理由はモノレール問題でした。その後、いろいろと政治的にややこしくなります。ランニングコストすらも賄えないなら運転をやめればいいのだけど、巨額の市財政を投じた無駄を追求されるのもなんなんですぐに廃止もできなかった。
 そして惰性で経営を続けながら、1974年に運行休止、1979年に正式に廃止となっています。動いていたのはわずか8年でした。

 姫路モノレール建設に巨費を投じて造ってしまったけど完全にもてあまして廃止してしまった
という事実は、以降の姫路市政にとって大変な重荷となります。完全な市税の無駄遣い。それは後継者にとっても市役所にとっても同じなのだけど、公費で造った構造物を撤去するのは政治的にも経済的にも難しい。
 廃止後、手柄山駅の軌道の入口部分はコンクリートで塞がれてしまいました。運行再開する可能性は皆無だったし、姫路市政にとってあまり触れられたくない事業である。かといって公園内にあるため跡地利用は難しい。施設の撤去にも莫大な費用がかかる。封印されたままでした。
 で、長らく放置されたのだけど、

  • 2008年2月 手柄山駅兼車庫の建物の耐震化工事を施した上で一般公開されることになる旨が報道される。08年度予算で実施計画委託料として2000万円を計上。続けて、休止された姫路市立水族館と一体化した施設となることも発表
  • 2009年10月 車庫に置いてあったモノレールをホームへ移設することになり、1両が車庫の外に出された
  • 2009年11月 車両の一般公開
  • 2011年4月 ホームに移設した2両が一般公開

ということになりました。当初計画では水族館の付属施設とされていましたが、無料で入れるんですね。

姫路市モノレールの1年半前の状態はこんな感じでした

 1年半前はこんな状態でした。
 まずは外側。






 ホームの中から見たモノレール。





 モノレールの車内です。






 そしてホームの構造物。






なんで公開されるようになつたのかよくわからないモノレール展示室

 取材に行ったときのこと。
 市役所の広報の方と話をしていると、直後に予定されていた一般向け公開への問い合わせが殺到していると言うことでした。で、
「今は鉄道ブームですし、レアなロッキードのモノレールですから、たくさんお客さんがきてくれますかね」
と僕に尋ねてきました。
 難しいですね。「●日間限定」ってイベント、あるいは「もうすぐ廃止」ってことなら、たくさん鉄道マニアは来るかもしれない。
 けど、2011年春からはいつでも誰でも見学できる状態になるんですよね。最初の半年ぐらいはそれなりに来るけど、3年後、5年後はどうなんだろう。マニア的には公開していただくのはありがたいけど、そこに何億円も税金を投じるのは……
「そうですねえ。う〜ん」と苦笑いする僕。
 そのやりとりを見ていた某紙の記者さん。
「そんなことあるわけないだろ」
と吐き捨てるような一言。そして、
「モノレール造ったのは今の市長の父親だったからね。」と。

 そうなんですよね。現在の市長は石見利勝。そのお父さんは、モノレール建設時の市長だった石見元秀。父が市長の座を追われた原因となったモノレールになんらしかの思い入れがあるのかなあ。お役所的にはいろいろややこしい案件で放置プレイされ続けたモノレールという存在に何とか光を当てたかったのか。
 でも、どう考えても戦後の姫路市政最大の失敗策にしかならない。ただのお荷物。
 市民としては、生活のじゃまになっている高架橋を撤去してくれということになる。築後40年、コンクリートの剥離も目立つ。山陽本線の高架にあわせて一部は撤去されたが、営業開始時の総延長1.824kmのうち、撤去されたのは0.765km。全体の46.1%だ。現存する1kmほどの区間を取り除くには40億円を超える撤去費がかかるという。ここ十数年だけでも、市議会で何度もそうした質問が市議会議員から出されているが、いっこうに進まない。
 水族館とモノレールの改修(耐震構造強化も含む)にかかる費用は13億円もするという。最大の観光地である世界遺産・姫路城からも離れているし、はたしてどれだけの集客が期待できるのか。市議会でも疑問視する意見は出ていたけど、なぜか計画は推進された。そして、石見市長は今月の市長選で当選して3期目を迎える。
 そこらをスルーして、モノレールだけ「なつかしき昭和の姫路」として今日的に美化しようとしてもなかなか無理があると僕は思う。どこの新聞もなぜモノレールにまつわる過去の経緯を指摘しないのかな。現職市長に対する遠慮があるのか。
 親子の市長ってんだからほかにも生臭い話がいろいろあるんだろうな、という気はするけど、それはまた別の話。<参考>
姫路モノレール手柄山駅跡で封印されてきたロッキード式モノレールを見る。 - とれいん工房の汽車旅12ヵ月