繁華街とピンク街
この太田市のピンク街が歌舞伎町などの他のピンク街と違っているのはその立地条件にある。駅前の大通りにあたかも自分達が街の中心のようにある点だ。ではなぜこんなシュールな光景が出来たのだろうか。生存のためピンク街化する地方商店街
ピンク街化って、そんなにいけないことなのかなあ。ピンク街化出来るってことは、地方とはいえそれなりに人の通る繁華街なんでしょ。そういうところにピンサロとか個室ビデオ屋とかエロ本・エロビデオ専門店があるのは、需要と供給という意味では普通のことなんじゃないの? ある程度の規模の商店街に風俗通りがないってことのほうが俺には妙に思えるんだけど。NaokiTakahashiの日記 地方商店街の話
高橋氏は「繁華街」という言葉を使うとき、たぶん大阪のキタやミナミをイメージしていて、地方都市の商店街をその雛形のようなものと捉えているのだろう。しかし、地方都市の中心市街地は実はそういう意味での「繁華街」とは全然別物だ。「変なことを書いている」という印象は、そのあたりの認識のずれに由来するのだろう。だが、大都市と地方都市がどのように違っているのかを言葉で説明するのは相当難しい。一本足の蛸 「繁華街」のイメージ
僕が想定していたのは、キタやミナミほど大きくはないものの、阪急京都線の高槻とか、阪急宝塚線の庄内とかの、確かに結構大きめで都会に近いところですね。急行の止まらない駅前にちょこっとできてるモール街、みたいのとは違うものを想像してました。NaokiTakahashiの日記 僕の「繁華街」のイメージ
そもそも店舗型の風俗店って衰退していますよ
はてなブックマークでの反応も含めて「繁華街」の捉え方の違いが面白い。人によって地方都市もしくは地方商店街の定義がズレていることからきているからの相違であって、そもそも大都市周縁部の郊外都市、そして県都や人口5〜30万人程度の地方拠点都市では繁華街の成り立ちは異なる。
むかしからピンク街、と言うより色街の発達史というのは近世や近代の都市風俗(性風俗ではありません。念のため)を考察する上での重要なテーマとなってきていて、江戸=東京だと吉原や洲崎、向島、京都だと島原、大阪だと松島、飛田……に関する様々な研究がなされています。そうした街並みは、歓楽街の近接地、市街地の外れ、都市と農村の結界に設けられたのですが、大正期以降の都市化でいつしか住宅街に取り込まれていく。そうした異界の名残は今でも色濃く残っています。近隣の住民にしては不愉快に思っている人も少なくないのでしょうが、そんな新興住民よりも昔から営業をしている人たちを糾弾するのはなかなか難しい。地方拠点都市の色街も、人口規模による店舗数の大小はともあれ同じような成り立ちをしてきたはずだ。
ただ、ここ10年ほど東京や大阪、横浜など大都市では店舗型風俗に対する締め付けが厳しくなって新規出店は難しくなっている。また、不法残留外国人の摘発が相次ぎ、横浜の黄●町やあるいは新宿や池袋、梅田のた△○ぼなど壊滅してしまった地域や業態も多い。今ではデリバリーヘルスに代表されるような出張型、そしてダイヤルQ2(って今でもあるの?)やテレクラ、出会い系などの媒体へと次第にシフトしていっている。そうした新規風俗は目立つように店舗を構えていないので、無関係な人の目に触れる機会は確実に減っている。過当競争で飽和状態になっていて売上を横ばいにするのもなかなか難しいらしい。
一方、函館や青森、鳥取、熊本など地方拠点都市では景気低迷と経済停滞で需要そのものが減っている。都市規模の小ささもあるのだろう。それゆえに固定費がかからず多様な場所を選択できる出張型形態が隆盛を極めており、地方拠点都市のコンビニに行くとその手の情報誌で18禁棚は埋め尽くされている。
風俗店と買い回り品と郊外化。
その中で一人気を吐いているのが大都市周縁部の郊外都市で、埼玉県の西●口、茨城県の土○、群馬県伊○崎、三浦展が「下流同盟」で指摘した太田市がその代表例。先に列挙された高槻や庄内もその仲間になると思う*1。
特徴的なのは、
- 色街が形成されたのは90年代になってから(週刊誌などで話題になったのは80年代末に某都市で東南アジア某国のエイズ患者が出た頃だと思う)
- 店舗型で進出したケースが多い
と言うこと。そこらの街並みが形成されていった過程はよく分からないが、
- バブル期にオフィスや飲食店目当てでビルを建てる
- 景気低迷と中心市街地衰退で需要減
- 空き店舗の有効活用を目指して風俗店オープン
なんて経緯があったのではないかと推察している。産業と人口の郊外化が進んだこと、そして買い回り品の需要が拡大したことで、郊外都市にもマーケットがあることを誰かが気付いた。それゆえに風俗産業の郊外立地が進んだのであろう。80年代に百貨店や電器屋、アニメショップ、ファッション店の郊外進出が相次いだのと同じ理屈である。
ただ、繁華街の片隅とはいえ、その看板や広告がフツーの人々の目に付くところに並べられているから批判の目にも晒される。80年代までそうした地域では商売をしていなかったのに、ここ10年ほどでやたらと増えてきた。地元住民には悪所であるという認識がなかったわけで軋轢が生じるのも仕方がないと言うことか。西●口のように官憲の手で淘汰されたところもあるけど、お目こぼしされている地域もまだまだある。そうした場所がどのように変わっていくのか。市街地での路上観察を趣味としている人間の一人として大いに関心はある。
むかし、そうした都市の形成過程を調べていきたいねと某地理系の研究者と語り合ったのは10年ほど前のこと。それから折に触れて旅先で色街を訪ねたり男性向け雑誌の関係記事を読んだりしたのだけど、実体験で身についていないから蓄積になっていない。そもそも関係者たちは、自分の利益にならないのに、ヨソ者に情報を教えてくれるはずもない。それを考えると、テレクラに通いつめて女子高生の援助交際の現場を取材し尽くした宮台真司って凄いよなあと改めて思ったりもするのだけど、それはまた別の話。
続きは2007-08-24繁華街から隠された成人映画館とピンク街
以下は、地方郊外都市、地方拠点都市の色街歩きの参考にしたい本。
まぼろしの郊外―成熟社会を生きる若者たちの行方 (朝日文庫)
- 作者: 宮台真司
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
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- 作者: 木村聡
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
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- 作者: 勝谷誠彦
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*1:その地域別店舗リストを直リンしようと思ったけど、未成年者の閲覧にふさわしくない記述・表現が含まれているんで「ピンサロ」と検索して上位に来るヤツをテキトーに調べてください。某サイトのレポートを見れば、北関東を始めとする郊外都市での進出がいかに凄いのか実感できます