橋下徹大阪府知事、大阪高速鉄道と大阪外環状鉄道の廃止・売却を検討する

katamachi2008-02-05

 もと大阪府民として、ABC「ムーブ!」の視聴者として、橋下新知事の施策には非常に興味があります。で、

大阪府知事に就任する橋下徹氏(38)は4日、府幹部との協議の中で、83の府立施設のうち、中之島図書館(大阪市北区)と中央図書館(東大阪市)の2施設以外は「不要」との考えを明らかにした。
「図書館以外は不要」橋下氏、大阪府施設の廃止・売却検討読売新聞、2008.02.05

と発言したんですね。今晩、寝ようとしたら図書館と博物館と大阪高速鉄道 - 一本足の蛸で知りました。朝日だとhttp://www.asahi.com/kansai/news/OSK200802050097.html

  • 見直し 81施設
  • 出資法人民営化 46団体のうち42団体

 どれが対象となるのか完全に明示されていませんが、大阪府ホームページの大阪府の指定出資法人を見ると、「府が25%以上かつ最大出資(出捐)の法人又は「府の事務事業と密接な関係のある法人」は全部で46法人。
 以下、「21世紀の大阪のシンドラー(いや、逆にヒトラー?)」こと橋下府知事の粛清に遭う「ハシモトのリスト」。

財団法人大阪国際平和センター
財団法人アジア・太平洋人権情報センター
財団法人千里ライフサイエンス振興財団
財団法人大阪府文化振興財団
財団法人大阪府男女共同参画推進財団
財団法人大阪府青少年活動財団
財団法人大阪21世紀協会
財団法人大阪府マリーナ協会
財団法人大阪府育英会 →セーフ
財団法人大阪府国際交流財団
株式会社大阪国際会議場
社団法人大阪国際ビジネス振興協会
財団法人大阪府地域福祉推進財団
財団法人大阪府保健医療財団
財団法人大阪がん予防検診センター
社会福祉法人大阪府総合福祉協会
社会福祉法人大阪府障害者福祉事業団 →セーフ
財団法人大阪産業振興機構
財団法人大阪府産業基盤整備協会
株式会社大阪繊維リソースセンター
大阪府中小企業信用保証協会 →セーフ
財団法人大阪労働協会
財団法人西成労働福祉センター →セーフ
大阪府職業能力開発協会
財団法人大阪生涯職業教育振興協会
財団法人大阪府みどり公社
株式会社大阪府食品流通センター
財団法人大阪府漁業振興基金
株式会社大阪鶴見フラワーセンター
大阪高速鉄道株式会社
大阪府道路公社
財団法人大阪府公園協会
大阪府土地開発公社
堺泉北埠頭株式会社
大阪府都市開発株式会社
大阪外環状鉄道株式会社
財団法人大阪府下水道技術センター
泉大津港湾都市株式会社
大阪府住宅供給公社
財団法人大阪府都市整備推進センター
財団法人大阪府タウン管理財団
財団法人大阪府水道サービス公社
財団法人大阪国際児童文学館
財団法人大阪府スポーツ・教育振興財団
財団法人大阪府文化財センター
財団法人大阪体育協会

 あと、

なんかもいっぱいありそう。毎事業年度、法人の経営状況を説明する書類(「経営状況報告」)を作成し、議会に提出することが"義務付けられていない"のです。たとえば、JR東西線を造った関西高速鉄道は、大阪府大阪市の出資比率は共に22.5%(現、23.9%)ですし、尼崎市兵庫県の出資比率を足しても創設時には50%未満となるよう調整されていました(後で削除)。赤字や借入が悲惨な状況でも情報公開の義務がないんですね。そこらもオープンにしてくれるのなら、もう僕は府民じゃないけど、橋下さんを褒めやりたいと思います。

半分も廃止・売却できないというのに1000万ジンバブエドルを賭けてもいい

 選挙前からそれに近いことを言っていたので、その点では驚きはないのです。一方、大阪府も2007年8月に出資法人のあり方総点検の結果について(案)を出しています。その両者を比べると、今後の展開がなんとなく見えてきます。
 正直、株式会社大阪国際会議場のように、経済団体や自民党府議が大反対しそうなところもたくさんある。彼らの支援を受けている新知事がそれらを切り捨てられるはずもない。そもそも、「不要』との考えを明らかにし」て、「廃止・売却の検討を行うよう指示」しただけです。夏頃には、「検討はしたけれど、やっぱり」と前言を翻すのは間違いない。図書館とか、自民党府議団が猛反対しそうな大阪府中小企業信用保証協会を事前に外すなど、そこらは巧妙に予防線を張っていますね。
 僕はもと府民地方財政好きと言うことでニュース全体に興味はあるのですが、やっぱり気になるのは鉄道関連会社。

があります。これに準じた出資をしているのは、前述の関西高速鉄道株式会社(23%)と北大阪急行電鉄(25%)。この五社かなあ。大阪府がそれなりの割合を出資している鉄道は。
 記事で明示されているのは、

大阪高速鉄道などを対象に、民営化などの検討を進める

の一件のみ。
 このうち、本業である鉄道部門がかなりヤバい状況にあるのは、大阪高速鉄道大阪外環状鉄道関西高速鉄道の三社でしょう。
 ちなみに、東京都副知事に転身した猪瀬直樹『週刊文春』07年3月1日号に書いた記事によると、

<主な「公社」・「三セク」借金ランキング>
第三セクター■(借金額ワースト20)
1位 東京都地下鉄建設       4879億円
2位 首都圏新都市鉄道(茨城県)  3207億円
3位 関西国際空港用地造成(大阪府)2669億円
4位 横浜市建築助成公社      2594億円
5位 関西高速鉄道大阪府)    1836億円
6位 茨城県開発公社        1455億円
7位 東京臨海副都心建設      1345億円
8位 横浜市道路建設事業団     1303億円
9位 竹芝地域開発(東京都)    1129億円
10位 東京テレポートセンター    1000億円
11位 多摩都市モノレール(東京都)  969億円
12位 神戸港埠頭公社         946億円
13位 北総鉄道(千葉県)       935億円
14位 埼玉高速鉄道          784億円
15位 おかやまの森整備公社(岡山県) 694億円
16位 北海道農業開発公社       669億円
17位 横浜高速鉄道          660億円
18位 びわ湖造林公社(滋賀県)    638億円
19位 東京港埠頭公社         634億円
20位 石川県林業公社         623億円
第三セクター(全6466社)合計 7.1兆円】

ということになつているらしい。借金額は金融機関からの借入金、社債自治体からの融資の合計額で、その算出方法については議論が分かれるのでしょう。漏れている団体も多いように見える。
 でも、東京都新地下鉄建設(都営地下鉄大江戸線)、首都圏新都市鉄道(つくばエクスプレス)、多摩都市モノレール北総鉄道埼玉高速鉄道横浜高速鉄道……と、ワーストランキング上位に関東の第三セクター鉄道会社が名を連ねている。

大阪府系の第三セクター鉄道会社3社を考えてみる

 さて、この<主な「公社」・「三セク」借金ランキング>で、大阪の関西高速鉄道は全国ワースト五位の借金額1836億円です。もともとJR東西線の地下線建設のために造られた会社です。建設費約4000億円から過去10年間にJR西日本から受け取った線路使用料を差し引けば、それぐらいの借金がまだあるというのは推測できる。
 この鉄道も、1988年に設立されたとき、一日の利用者数は50万人とか60万人、1997年の開業直前に下方修正したときも20万人とか言っていたのに、現実には開業から10年経っても13万人とかそこらに留まっている。また先に言ったように、大阪府大阪市も「法人の経営状況報告の義務」がないんで、経営の詳細がいまだにオープンになっていない。市議や府議ですらアプローチできないというのは大問題だと思います。
 大阪高速鉄道の場合、借入金残高は07年3月末で104億円。それと、大正時代なら"箕面の山猿でも乗せる気ですか"(元ネタは山田線とは - はてなキーワード参照)と大阪府議会で質問されかねない彩都線という"超お荷物路線"がここ数年で開業している。
 大阪府ホームページの大阪高速鉄道株式会社の財務状況を見ると、01年度から6期連続単年度黒字を出していて、06年度も当期利益4億円を計上していることが分かる。ただし、見直しをした06年度でも、大阪府財政から"委託料"として9億円が計上されている(府の負担は、05年度は13億円、04年度は66億円)。委託料ってどういう性質のものか不明である。この他、過去に負担金・分担金・出資金……と言う名目でどれぐらい金額が投じられたのだろう。ここは、神戸高速鉄道と同様、今でも大株主である阪急や京阪(阪神近鉄、南海も同比率出資)に売却という手もありそう。でも、彩都線は両社ともいらないんだろうな。
 そして、一番気になるのは、大阪外環状鉄道株式会社(JRおおさか東線)。コスト削減をしてきた旨をさかんにアピールしていますが、これほど"政治的な路線"というのを私は大阪で見たことはない。
 正直、これは東大阪市(旧布施市域)の政治家さんたちの"政治路線"です。
 ここで旅客列車の運転を請願し始めたのは布施市の時代だから50年以上前。そこで市長をやっていたのが、塩川正十郎の父親なんですね。で、1981年、国鉄に無理矢理、外環状線の建設を指示するのですが(ただ翌年の閣議決定で凍結)、その時の運輸大臣は塩川ご本人。第三セクター会社として90年代半ばに再出発しようとしたときも、JRは嫌がっていたし、大阪市も消極的だったけど、何だかよく分からない経緯で建設が決定してしまいます。
 この線の開業は来月15日。不思議なことに、開業するのは計画区間の半分。なぜか、その多くが東大阪市域なんですね。これについてはいろいろ語りたいこともあるのですが、それはまた別の話。<参考>大阪外環状線おおさか東線ネタ
大阪外環状線は「おおさか東線」 - とれいん工房の汽車旅12ヵ月
6年前に書いた"大阪外環状線"未成線ルポ - とれいん工房の汽車旅12ヵ月
橋下徹大阪府知事、大阪高速鉄道と大阪外環状鉄道の廃止・売却を検討する - とれいん工房の汽車旅12ヵ月
 さて、こんな時、私の"天敵"で民青の親玉である大阪府議会の共産党議員団あたりに、鉄道建設反対ぐらいやって欲しいのですが、あの人たち、空港とかの大規模開発には反対するけど、鉄道建設には諸手を挙げて大賛成しているんですね。いまだに"市民のため"、"選挙の票"に繋がると錯覚しているらしい。大阪市長選でも、今里筋線の今里以南への延伸をずーっと主張し続けているのは彼らです。ああ、大阪府議会はドロ船。いち早く府外に脱出して良かった……と強がりを言うのも寂しい限りなのですが、それもまた別の話。

追記 第三セクター鉄道神戸高速鉄道」の株式

 上で大阪高速鉄道の案件の参考で示した神戸高速鉄道の件。資産査定は順調に行っているようです。

 神戸市が阪急阪神ホールディングス(HD)に経営を委ねることを決めている第三セクター神戸高速鉄道」の株式譲渡をめぐり、市と阪急阪神HDの双方が二月中にも、神戸高速の資産査定を終える見込みであることが二十一日分かった。今年夏にも神戸高速社員の雇用や譲渡する株数などの大枠を固め、交渉を本格化させる。二〇〇九年春までに、市は阪急阪神に株式を売却する方針(中略) 神戸市は同社株の40%を持つ筆頭株主、阪急阪神はグループで19・9%を持つ。市が保有株の30%強を譲渡し、阪急阪神が経営権を握る案などが検討されているもよう。市にとっては初の“民営化”案件となる。神戸高速は阪急阪神の傘下入り後も子会社として存続するか、分割して阪急、阪神などに資産を引き継ぐのか-なども注目される。
資産査定2月に終了 阪急阪神と交渉へ 神戸高速鉄道神戸新聞

 本文にもありますが、阪急阪神と給与体系や雇用ルールが異なる神戸高速鉄道社員(約百五十人)の雇用確保が焦点となるのでしょう。技術部門も間接部門も、阪急阪神HDが社員として引き受けられるだけの余力があるのか……ということですよね。ここらの調整は大変そう。